日本作物学会紀事
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稲の細胞間隙の研究 I
片山 忠夫
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1961 年 29 巻 2 号 p. 229-233

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抄録
作物組織の細胞間隙が発達し, 生理的に通気系として作用する意義を持つことは既に報告されている. 稲の根と葉に発達する細胞間隙の定量的研究を行ない植物の発達段階と栽培条件との関係を検討した. 比較のために Zea mays と Vicia faba を用いた. 測定方法は次の通りである. 空気中の重量: G1, 水中の重量: G2, 空気を追い出した後の重量: G3, 水の密度: p, V=(G1-G2)/p : 物体の容量, v=(G3-G2)/p : 細胞間隙の量, v%=v/V×100 : 細胞間隙量が全体積に占める割合 1) 根の細胞間隙の量は稲においてトーモロコシやソラマメより大きい. 根端からある部位まで次第に増加する. その部位は生育状態により異なる. 2) 水稲の根では水田状態において, 畑状態に生育したものより大きく約3倍に達する. 3) 葉においては葉位によつて違つた値を示し, 1枚の葉においても部位により異なる. 4) 幼葉では葉身において葉鞘より大きいが成葉では逆になる. 5) 若い苗令では水稲は陸稲より大きい値を示すが, その後次第にその関係は不明瞭になる. 6) 葉の細胞間隙の発達にも生育環境が影響する. 若い苗令では水田に生育したものは畑に生育したものより大きい値を示すが, 苗令が進むにつれて次第にその関係はなくなる.
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