日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
セイロンにおける水稲の生理病"Bronzing"に関する研究(予報)
太田 保夫山田 登
著者情報
ジャーナル フリー

1962 年 31 巻 1 号 p. 90-97

詳細
抄録
セイロンのWet ZoneにはBronzingとよばれる生理病がある. その原因は土壌中における過剰のFe"にあると考えられているが, 現地調査の結果, 土壌中のFe含量と本病発生とは一定の関係がなかつたので, 健全稲と罹病稲について体内成分の比較を行なつたところ, 罹病稲は健全稲に較べてMn, K, Ca, SiO2含量が著しく低く, Fe含量もかえつて低い. またN含量が高く可溶態窒素の占める割合が大きく, 健全稲にはみられないアミノ酸, アミドが検出される. 罹病稲は葉身部の全糖含量が著しく高く葉鞘, 茎部の全糖, 澱粉含量は低い. 一方酸加水分解性多糖類の含量は著しく高い. また種々な程度に罹病せる水稲について体内成分を調べ, それぞれの成分と罹病度との関係を調べた結果Ca含量と密接な正の相関がみられ, また罹病稲の根には多量のAl+++が検出された. 以上の結果より本病は低Caの条件下におけるAl+++の害と推諭されたので水耕, 土耕法によつて低Ca下でAl+++を添加したところBronzing症状がみられこの推諭の正しさが実証された. なおこの罹病葉について生埋的活性を測定した結果赤枯病と同様に無駄な呼吸の異常昂進とCytochrome C oxidase活性の低下, Peroxidase活性の昂進がみられた. 本病の対策としては石灰の施用と排水および堆肥施用が有効である.
著者関連情報
© 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top