2021 年 30 巻 5 号 p. 287-290
膝窩静脈瘤は稀な疾患であるが,肺血栓塞栓症や深部静脈血栓症を起こしうる疾患である.われわれは肺血栓塞栓症を契機に発見された膝窩静脈瘤に対し,再発予防のため静脈パッチ形成術を行った一例を経験したので報告する.症例は62歳,男性.左膝窩部の疼痛を自覚し,数日後労作時呼吸困難と強い胸痛を自覚したため救急要請され,当院救命センターに搬送された.胸部造影CTにて肺血栓塞栓症と診断され,血栓溶解療法が開始された.また下肢造影CTにて左膝窩静脈瘤を指摘され,手術加療目的に当科紹介となった.全身麻酔下に左膝窩背側アプローチで手術を行った.瘤内部には多量の陳旧性血栓が存在した.瘤化組織を切除すると,残存した正常組織が少なかったため,下腿末梢で小伏在静脈を採取し,静脈パッチ形成術を施行した.術後静脈内血栓の再発をみとめず,良好な結果を得ることができた.