日本作物学会紀事
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セイロンにおける水稲のブロンヂング病に関する研究 : 1. ブロンヂングの発生におよぼす処理の効果ならびに罹病による葉の呼吸作用の変化
稲田 勝美
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1965 年 33 巻 4 号 p. 309-314

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抄録
セイロンにおける水稲の生理病ブロンヂングについて, 発生程度の異なる3カ所の水田を用い, 数種の処理が本病の発生, 水稲の生育ならびに収量に及ぼす影響を明らかにすると共に, 罹病葉における呼吸系の変化について研究を行い, つぎの結果を得た. 1. ブロンヂングの発生程度は, ゴム林に接した砂質水田(sandy area I)では大であったが, 有機質を多く含む水田(boggy area)および道路に近い砂質水田(sandy area II)では小であった. 2. 石灰施用によって, boggy areaでは本病が発生が抑制され生育ならびに収量が増加した. しかし, sandy area Iでは罹病抑制の効果がいちじるしかったが, 生育が遅延し収量が低下した. 3. 堆肥施用や有機質土壌の客土は本病の発生を抑制し, 収量を増加させた. その効果はboggy areaよりもsandy area I, IIで大であった. 4. 本病が早期に発生すると生育, 収量構成要素ともに罹病がいちじるしいほど低下したが, 発生時期がおそい場合にはおもに収量や登熟が低下する傾向が認められた. 5. 罹病葉では呼吸がいちじるしく高まり, 呼吸増加と罹病程度との間に密接な関係があった. 6. 罹病植物の葉身は健全植物にくらべてDNPによる呼吸の促進率が低く, azideによる呼吸阻害率が減少し, チトクロームオキシダーゼ活性が低下した. しかし, パーオキシダーゼ活性がいちじるしく高かった. この結果から, 罹病葉ではエネルギー生産効率の低い呼吸系が発達すると考えられた.
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