日本作物学会紀事
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セイロンにおける水稲のブロンヂング病に関する研究 : 2. ブロンヂングの発生原因について
稲田 勝美
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1965 年 33 巻 4 号 p. 315-323

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抄録
ブロンヂング発生の原因を明らかにするために, 圃場試験, ポット土耕ならびに水耕試験を行いつぎの結果を得た. 1. 土壌の酸化還元電位(Eh6)の低下が本病の発生を誘起する要因の一つであることが認められた. ただし発生期間中のEhレベルは激発土壌では相対的に高く, 発生し難い土壌では低い傾向があった. 2. 本病の発生は単に土壌の低pHとは関係がないが, pH約6.5以下で発生することが明らかになった. 3. 土壌中の可溶性鉄含量は本病の発生と関係かなかったが, 水耕液に過剰の二価鉄を加えるとpH 6.5以下で本病に似た症状が現われた. 4. 土壌または水耕液中に高い濃度の硫化物ことに硫化水素と過剰の二価鉄が共存すると本病酷似の症状が現われた. 5. 罹病葉身では鉄含量がいちじるしく高く, 罹病程度と鉄含量の間に密接な関係が認められた. また, 発生田の植物体には極端にマンガンが少なかった. 6. 以上の結果から, 一つの可能なブロンヂングの発生原因をつぎのように推定した. すなわち, 硫化物, 二価鉄およびほかの有害物質が土壌中に集積して根の生埋的活性を阻害し, その結果, 鉄の過剰吸収と植物体への過剰蓄積をおこすとともに, 他方ではマンガン, 加里, 珪酸などの養分吸収を阻害して代謝の撹乱をひきおこし遂にブロンヂングを発生させる.
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