抄録
作物の高温障害に関する基礎的研究として, 牧草および水稲の生育および呼吸に対する高温の影響をしらべた. 夏期高温時に播種したイタリアンライグラスの生育は地温を低下することにより, ある程度促進されるのがみとめられた. 地上部と地下部の呼吸に対する温度の影響をしらべたところ, 水稲葉身では実験範囲(20℃~44℃)の内では温度の上昇にしたがって呼吸も増加したが, イタリアンライグラス, オーチャードグラス, チモシーの葉身では32℃以上では温度上昇に対する呼吸増加率が低下した. 一方根の呼吸は水稲では32℃以上で呼吸増加率が低下し, イタリアンライグラス, オーチャードグラスでは26℃以上で呼吸増加率が低下するのがみとめられ, 地上部にくらべて根は高温障害に対して弱いようであった. つぎにこれら高温による呼吸活性の低下の原因を明らかにするため, 呼吸基質としてのグルコース, あるいは原形質の主要な構成成分である脂質に作用すると考えられるクロロフォルムの影響と高温の影響との関係をしらべ, 高温による呼吸活性の低下は, 呼吸基質の消耗以外にも原因があることを推定した.