抄録
減数分裂期の低温による雄性不稔の発生機構を研究する林料を得るため, 水稲の培養条件をファイトトロンの自然光室および人工照明室においてしらべた. せまいファイトトロンを有効に利用し最小の労力で減数分裂期に同調的に生育している穂をできるだけたくさん得るためには, 生育日数がみじかく日長感応性のひくい早生品種をもちい, 1/5,000aポットに円形20株の密植で直播して主稈のみをもちい, 生育室の温度は昼25℃-夜19℃程度に周年固定し, さらに微気象の作用を消去するために毎日ポットの室内移動をおこなうのが適切であると結論された. このような条件のもとで, 自然光室のみならず人工照明室においても, 水稲を播種から採種までの全生育期間にわたつてほぼ正常に培養することができた. 生育は旺盛かつ健全であり, ガラス室におけるよりも稔実歩合もたかく千粒重もおおきかつた. しかし生育初期には相当の徒長がみられた. 減数分裂期に12℃4日の低温処理をおこない, 50%以上の不稔をおこさせることができた.