日本作物学会紀事
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作物の出芽に関する研究 : 裸麦の幼芽の抽出力におよぼす土壌水分, 温度および種子の大きさについて
井之上 準瀬古 秀文伊藤 健次
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1970 年 39 巻 1 号 p. 41-46

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抄録

ストレーンゲージ荷重変換器 (UL 1 kg) を応用して, 裸麦の幼芽の抽出力におよぼす土壌水分, 温度および種子の大きさについて実験した. 供試材料は渦性の鹿児島裸, カイモンハダカおよび並性の仏1号であつた. 結果の概要はつぎの通りであつた. (1) 土壌水分8~15%の範囲内では (乾重比), 幼芽の抽出力にはほとんど差はみられなかつたが, 土壌水分が15%以上になると幼芽の抽出力は弱くなつた (fig. 1)。(2) 並性品種では, 抽出力は幼芽が伸長するにつれて強くなり, 幼芽長3cmで最高に達し, その後は幼芽の伸長につれて漸次弱くなつた. ところが渦性品種では, 伸長初期の幼芽 (0.6~3.0 cm) ではほぼ同じ強さであつたが, その後は伸長につれて急激に弱くなつた (table 1)。(3) 幼芽の抽出力は, 10゜~20℃で育成された幼芽において, 25゜~30℃で育成された幼芽よりも強かつた. このことは, 裸麦の幼芽の抽出力の適温は, 発芽および幼芽の伸長の適温よりもやや低いことを示していると思われる (table 2)。(4) 種子の大きさは大きいほど, 幼芽の抽出力は強かつた. すなわち, 種子1粒重が約5mg重ければ渦性品種では5~7g, 並性品種では約10g強くなつた. なお, この関係は, 温度の影響をほとんど受けないようであつた (fig. 3, table 3)。

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