日本作物学会紀事
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タイ国の乾期高温時にみられるインド稲新品種の空籾の異常発生
長田 明夫サシプラパー ビチェンラホーン マナットダマヌボン ソンマートチャクラバンダ ハンサ
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1973 年 42 巻 1 号 p. 103-109

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抄録
タイ国の乾期後半, 4, 5月頃は最も気温が高くなり, 日最高気温が35°~36℃あるいはそれ以上の日が多い. 近年タイ国においても, IR8などに似た, 非感光性の新しい交雑種がさかんに育成されつつある. これらの品種のなかには, この乾期高温時に開花すると, 多くの空籾を生ずるものがある. 著しい場合には, 空籾率が数十パーセントに達することがある. そこで, 1970年に, 同国でこの問題を研究して, つぎのことを明らかにした. 1) 受精した籾には必ず澱粉の蓄積がみられるというが, 肉眼で判別した空籾の大部分は, ヨード反応を示さず, 不受精籾とみられた. 2) 4~5月にわたつて出穂するように, 12の品種を数回作付して, 空籾生成程度を調べた. その結果, 空籾率が30%を超えるものから, 通常値とみられる10%以下のものまで, その発生程度に顕著な品種間差異が認められた. 3) この間の気温と発生程度との関係, 開花期における高温処理, また国内各地の実態調査などから, 開花時における高温が, 空籾の異常発生の主たる誘因の1つであろうと推定された. すなわち, 開花時に, 日最高気温が34,5℃以上の高温の日が続くと, 受精障害がおこるものと考えられる.
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