日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
継代培養条件における液体培地中のイネ遊離細胞の性質と増殖
前田 英三
著者情報
ジャーナル フリー

1973 年 42 巻 1 号 p. 110-115

詳細
抄録
イネ品種短銀坊主の種子から生じたカルスを, 液体培地中で振とう培養し, 遊離細胞を形成させた. この遊離細胞を新鮮培地に移して, 継代培養をおこなつた. 継代培養によるイネ遊離細胞の増殖経過と, 細胞の性質との関係を調べた. 39回の継代培養実験中14回の実験で, 細胞の増殖が見られた. 細胞増殖の著しい場合には, 脂質体顆粒を含む生細胞の割合が多い. また, 染色しないで観察できる細胞核を含む生細胞の割合も多い. 新鮮培地に移してから10~20日後液体培地中に, カルスの小片が肉眼で見えるようになる. 細胞増殖が見られないときもカルス形成は観察されるが, 細胞増殖の著しいときに, カルスの生体重の増加も著しい. 細胞増殖の見られる場合には, Feulgen反応によつてよく染まる細胞核をもつ細胞の割合が多くなる. 以上の結果から, 液体培地に継代培養したときのイネ遊離細胞の増殖と, 細胞の性質との関係について考察した.
著者関連情報
© 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top