日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
重力刺激が水稲茎におけるオーキシンの生合成能に及ぼす影響
石井 滋規
著者情報
ジャーナル フリー

1973 年 42 巻 3 号 p. 387-394

詳細
抄録

貧養状態で育てた水稲の出穂期にある主稈から, 止葉の直下の節と葉鞘の一部をつけた長さ6 cmの茎切片を切取り, 暗黒下で直立にした基部から, DL-tryptophane-14Cの水溶液を3時間半吸収させた. 水洗後, 切片の基部を湿つた脱脂綿に包んで管びん中に封じ, 暗黒下で切片が水平または直立になるようにして, 3~24時間保つた. 採取した材料から組織抽出液をつくり, 薄層クロマトグラフィーにより分離したIAA-14Cの比放射能を測定比較した. 水平茎の節間基部では, IAA-14Cが, インキュベーション開始後12時間目まで上下両半側にほぼ 40 : 60の比に分布したが, その後この非対称性は減退した. しかし, 水平茎の節間頂部では, 直立茎の節間基部および頂部と同様, 終始この非対称性を認めにくかつた. 切片全体について求めたIAA-14Cの比放射能は, 実験期間を通じて水平茎が直立茎より12~23%高く, 前者は後者よりオーキシンの生合成能において優れていることが示された. このことと筆者の過去の実験結果とを総合すると, 水平に置かれた水稲にみられる発根および節間伸長の促進は, それらが行なわれる部位における, オーキシンの生合成能が増大することに基づくところが大きいと示唆された.

著者関連情報
© 日本作物学会
前の記事
feedback
Top