日本作物学会紀事
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豆類の冷害に関する研究 : 第5報 大豆の生育・収量におよぼす生殖生長初中期の低温と燐酸肥料ならびに施肥水準との関係
橋本 鋼二山本 正
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1974 年 43 巻 1 号 p. 40-46

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抄録
1) 無燐酸および熔燐または過石を施肥量を変えて施用した火山灰土壌に大豆を栽培し, 低温障害の危険期に15ないし30日間の低温処理を行い, 生育・収量におよぼす低温ならびに燐酸施肥の影響を検討した. 2) 低温処理区および対照区の粒重は, 燐酸施用量の多い方が大きい. しかし, 対照区と比較して減収の程度の最も大きいのは, 6g施用区の場合で, 無燐酸および18g施用区の場合の減収程度は少なかつた. 過石と熔燐との収量の差は認められなかつた. 3) 6g施用区の減収の要因を収量構成要素に分けて解析すると, 分枝の花の結莢率の低下と莢数の減少が大きいことが明らかになつた. 4) 過石区個体は同一水準の熔燐区個体より初期生育が良く, 花数が多かつたが, 100粒重では逆に有意に低く, 肥効の遅速が影響したものと推定した. 5) 低温処理を始めて15日目の個体の茎葉中のP含有率を対照区個体と比較すると, 無燐酸区は低下, 6g施用区はほぼ同一水準, 18g施用区は対照区個体より高く, 施肥水準によつて異つた. 6) 18g施用区個体は, 低温処理中の生育が無燐酸区個体あるいは6g施用区個体より優れ, 処理後の回復も順調であつた. 一方, 6g施用区個体は, 生育後期まで燐酸吸収を必要とする状態なのに, 低温処理による吸収低下と, その後の回復が不十分であつたことが, 減収の大きな原因と考えられる. 7) 収穫時の茎重の粒重に対する, あるいは分枝節数の分枝枝数に対する回帰を求めると, 低温および対照区の間で差がなく, 低温処理を受けても植物体の生育が良い場合には対照区個体に準じる収量をあげ得ることが明らかで, 燐酸多肥は少なくとも火山灰土壌における大豆の生育不良型冷害の軽減には有効に慟くものと考えられる. 本稿をまとめるにあたり種々助言して下さつた作物第一部長升尾洋一郎氏に感謝します。
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