日本作物学会紀事
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豆類の冷害に関する研究 : 第7報 花器発育期間における障害型冷害敏感期と大豆個体の窒素の状態との関係
橋本 鋼二山本 正
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1976 年 45 巻 2 号 p. 288-297

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抄録
本実験は, 花器発育期間における障害型冷害(結莢率および稔実歩合の低下)に対する敏感期と大豆個体の窒素の状態との関係を明らかにするために, 6ないし9日間の従来より短かい低温処理期間によって検討した。低温条件下における植物体中の窒素含有率が高いと, 開花の13ないし5日前にあたる花の障害型冷害に対する感受性を高め, とくに開花の11ないし7日前 - 葯の分化する1ないし2日前から減数分裂期を経て四分子期に至る - の花はいちじるしく障害を受けやすくなる。植物体が低温下で多窒素状態であれば, 6日間処理でも上述の低温感受性の高い生育段階の花に障害が生じやすく, 結莢率に相当の低下が認められた。これは, 開花前7ないし9日間は通常の生育環境に戻して発育させたにもかかわらず, 一旦受けた障害が回復しないことを示している。落花のいちじるしい増加の原因は, 雄性器官の機能的な異常によるものと考えられる。低温処理によって障害を受けやすい生育段階より2, 3日若いか, または発育が進んだ花器は短期間の低温処理では被害を免かれる。これらのことは, 低温下で植物体が多窒素状態にあることが, ある限られた発育時期の花器についてのみ有害になることを示している。
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