抄録
グレインソルガムの生育, 収量は環境条件とくに夏期の高温乾燥によって影響をうける。そこで圃場条件下における各生育時期の乾燥が生育, 収量, 葉の水分ポテンシャルにおよぼす影響について検討し次のような結果をえた。乾燥処理期間中の葉の水分ポテンシャルは乾燥が進むにつれて低下し, -22~-30 barに達した。一方十分な適湿条件下では-19bar以下に低下することはなかった。葉の水分ポテンシャルの日変化は午前ならびに日没直前に大きな変化を示し, 日中での変化はあまりみられなかった。なお強い乾燥処理をうけたものは夜間の回復もわずかであった。草丈の伸長, 乾物生産ともに乾燥処理によって影響をうけたが, とくに穂孕期の乾燥は穂梗の伸長を妨げ抽出長(止葉から穂首までの長さ)を著しく短かくした。穀実収量は適湿区が最高で, 穂孕期乾燥処理区が最も乾燥の影響をうけ最低収量となった。登熟期乾燥処理区は, かなりの降雨があったため適湿区よりわずかに低収となったにとどまった。また収量構成要素に対し乾燥は一穂粒数ならびに一穂重の低下をもたらした。しかし千粒重は, 登熟期間の降雨のためあまり影響はなく, また粒数減少に対する補償作用もみられなかった。日当り蒸発散量は十分な適湿条件下では穂孕期頃に最高に達し8.6 mmであった。全蒸発散量の最高は適湿区で約730 mm, 最低は栄養生長期から穂孕期にかけての長期乾燥処理区の560 mmで蒸発散量と穀実収量の間に直線関係が認められた。各処理区の収穫時の形質, 穀実収量および蒸発散量と収量等の関係からグレインソルガムの水分に対するcritical stageは穂孕期から出穂開花期頃と考察した。