抄録
湿度調節剤を入れた容器の中に貯蔵されたイネの種子の発芽活性が 20℃ で測定された. 含水量10~14パーセント程度の種子は 18℃ で2年以上にわたって良好な状態に保存された. 含水量19パーセント以上の種子は約1年をすぎると発芽活性が低下した. 含水量5~6パーセント以下の種子の発芽活性はかなりひくかったが, 1~9ヵ月の間変化しなかった. 乾燥により低下した種子の発芽活性はふたたび含水量を増加させることによりある程度回復する. その程度は乾燥および再加湿の程度によるが, はなはだしく乾燥した種子においては含水量が十分にたかくなっても活性が回復しなかった. 乾燥した種子を浸漬すると電解質が漏出してくる. 過剰乾燥種子では通常乾燥のものよりも電解質の漏出が多量であった. このことは細胞膜の構造が乾燥により破壊されていることを意味する. 以上の諸事実は, イネ種子の長期貯蔵にあたって乾燥剤の使用法に注意して過度の乾燥をさける必要があることをしめしている.