抄録
本試験は畑水稲を用い, 遺伝的な要因としては品種を, 環境的な要因としては栽植密度を変えた場合に諸形質の個体変異がどのように影響されるかをみたものである.
1. 草丈, 稈長などの形態にかかわる形質の変異係数は小さい. 乾物重, 穂数, 穂重およびわら重などの収量にかかわる形質の変異係数は大きくこれは環境反応が大きいことによる.
2. 品種および栽植密度による形質の変動程度を変異係数で比較するのは茎数, 穂数および乾物重のような収量にかかわる形質では可能であるが, 平均値と標準偏差に相対的な関係がない草丈や稈長のような形態にかかわる形質では適当でない.
3. 草丈, 茎数および乾物重の変動程度は穂数型の品種が穂重型の品種より大きい.
4. 栽植密度による諸形質の変動程度は競争の大きい密植条件が疎植条件より大きい.
5. 各形質の変動程度は, 疎植条件では生育時期の進展に伴って減少するが, 密植条件では競争が大きくなるために増大する.