抄録
前報に続き, CO2濃度処理(160, 350, 1000, 3200 ppm; 8~10日間)前歴がCO2-光合成特性におよぼす影響を, C3型作物のイネとC4型作物のヒエおよびトウモロコシを用いて, 照度55 klux, 葉温28℃下で検討した。1. 測定空気のCO2濃度が大気条件(300 ppm)の場合, 前歴の影響はイネで大きく, ヒエおよびトウモロコシでは比較的小さかった。特に高濃度(1000, 3200 ppm)前歴はみかけの光合成を抑制したが, それは光呼吸の昂進に基くものではなかった(第1表)。2. 測定空気のCO2濃度を変えて(0~2100 ppm)みかけの光合成および蒸散を測定し(第1図), 気孔抵抗および葉肉抵抗を計算した(第2図)。その結果, 前歴の影響は主として気孔抵抗の差異に基くものであった。3. 前報および本実験の結果から, 低濃度(160 ppm)前歴植物では主に小さな気孔抵抗に基く, 低濃度に対する光合成の適応が認められた。また高濃度前歴植物を大気中CO2濃度下へ移した時にみられる, みかけの光合成の抑制は, 暗呼吸や光呼吸の昂進あるいはCO2固定能の低下に依るものではなく, 気孔抵抗の上昇に基くものであり, CO2濃度が2000 ppm程度以下では気孔の影響が大きいことがわかった。