日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
大豆のチッソ代謝に関する研究 : 第4報 大豆の葉におけるチッソの動態と葉のタンパク質代謝との関連について
加藤 泰正北田 寿美
著者情報
ジャーナル フリー

1979 年 48 巻 2 号 p. 229-242

詳細
抄録

大豆植物体内のチッソを子葉に由来する部分と,生育各期に与えた肥料チッソ(15N)に由来する部分に分け,各器官,とくに葉におけるそれらの分布や転流状況を発芽後33日間追跡した. 発芽初期の8日間,幼植物は大部分(約80%)のチッソを子葉から獲得し,それらは根,茎,初生葉に分布したが,その後子葉のチッソは第1,第2本葉に送られるようになり,根,茎への供給はほとんど止むか,極めてわずかにすぎなかった. 発芽後14日目,初生葉中の子葉由来チッソは,初生葉全チッソがなお増加中にもかかわらず,早くも再転流を開始した. 20日目以降(子葉はすでに脱落),子葉由来チッソは第1,第2本葉などからも顕著に再転流を行い,実験終了時には下部より6枚の展開葉中にほぼ均等に分布し,なお上位3枚の未展開葉中にも微量が検出された.一方15Nは葉の全生育期間にわたって絶えず葉に流入し,葉の完全展開直前頃より流入と流出が同時に観察されるようになる. この点を考慮すると,大豆葉のチッソ転流能力は従来の推定を約2倍上まわるものと考えられる. このような葉のチッソの動態は,葉の全タンパク質の示す代謝回転と密接な関係にあり,葉におけるチッソの流入とタンパク質の合成,およびチッソの流出とタンパク質の分解は,それぞれがつねに同時的に進行し,摘心処理によって地上部の生長部分を除去すると,葉に対するチッソの流入とタンパク質合成はともに増加するが,葉のタンパク質分解とチッソの流出は何れもほぼ完全に停止することが観察された.

著者関連情報
© 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top