抄録
落花・落莢は冷害時における大豆の収量減をもたらす最も重要な現象の一つであり,開花前の低温に最も敏感である. 本試験は低温下における落花・落莢に対する抵抗性を高める物質を見出すために行った. 種々の化学物質を供試してその結莢におよばす効果を検討した結果,B-995は低温下での結莢を高める効果のあることを見出した. B-995について,さらに低温処理の時期と散布時期・散布濃度・散布回数を組合せて効果を検討した. 開花前の低温処理下においてはB-995散布が莢数を増加させ,その効果は低温に敏感な花芽の発達のステージで顕著であった. 結莢を高める最も効果的なB-995の投与は1000ppmの水溶液を低温処理開始時前後に5日間隔で2回葉面散布する様式であった. 開花後の低温処理ではB-995の結莢性促進効果が認められない. 適温下の場合は散布時期・散布濃度・散布回数にかかわらず結莢におよぼす効果は認められなかった. 矮化と結莢の関係から,開花前の低温処理下では茎長の抑制と莢数の増加が対応した関係がみられたが,適温下では茎長が短縮されても莢数の増加はみられない. これらの結果から,B-995が低温下では栄養生長と生殖生長に関与しているホルモンないしホルモン代謝に関与している物質の調節に何がしかの役割をはたし,結果的に生殖生長を優位に保ち,莢数増加をもたらしたものと考えられる.