日本作物学会紀事
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水稲根系による窒素の吸収と輸送 : とくに節位別に分級したインタクトな根群間の比較
巽 二郎河野 恭広
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1980 年 49 巻 2 号 p. 349-358

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抄録

発根節位別に分級したインタクトな水稲根群のアンモニア吸収と,吸収された窒素(N)の各器官への移行の様相を,15Nをトレーサとして調べた. 1. N吸収力は中位根群(第6,7,8節根)がもっとも高く,次いで下位根群(第5節以下の根群)が続き,若い上位根群(第9節根)がもっとも低かった. 吸収されたNの地上部への供給力も同様な傾向であった. 2. 地上部の遮光処理によって,中・下位根群のN吸収・供給力が著しく低下したが,上位根群では呼吸作用の低下にもかかわらず吸収・供給力が相補的に増加した. 3. 各根群から吸収されたNは,抽出葉へもっとも活発に移行した. 上・中位根群からのNは下位葉よりも上位葉へより活発に移行し,これとは逆に下位根群からのNは下位葉へより活発に移行した. 4. 盛んに伸長しつつある上位根群は,多量のNを他の根群から受取っており,その量は上位根群が培地から吸収し,他器官へ供給するNをうわまわっていた. 5. 以上の結果から,インタクトな根系においては古根群がN吸収ならびにNの供給器官として重要な役割をはたしており,一方新根群は通常,Nの供給器官としてよりも受容器官として機能していると考えられた.

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