抄録
モミラクトンAとBは,稲種子のモミに含まれる生長抑制物質であり,種子の休眠機構の一つの原因になっていることが指摘されている. 最近これらのモミラクトンは,ファイ卜アレキシン様物質である可能性が示唆された. 本報は稲のイモチ病抵抗性とモミラクトンAとBの関係を明らかにする意図の下に,まずモミラクトンAとBの迅速分離法の確立を日的として検討したものである. モミラクトンの分離は,ガスクロマトグラフ法では本物質が分解されるため適当でない. しかしTLC法とFID法の原理を具備したIatron法が最も適当である. その特徴は物質の単離が迅速に行えるばかりでなく,試料の損失が少なく,かつ特定の呈色試薬を用いることなく行いうる利点がある. 本法を用い検討した結果,イモチ病抵抗性をもたぬササニシキは,モミラクトンAとBはいずれも欠除していた.