抄録
正常なイネ,および冷温処理したイネから採取した小胞子初期前後の葯を,固定せずに生のまま光学顕微鏡で観察した. この方法で,正常な小胞子,タペート組織,冷温処理により異常となった小胞子,肥大したタぺート組織などがはっきりと観察しうることがわかった. また,固定(グルタールアルデヒド)した小胞子と未固定の小胞子との比較により,固定による収縮,変形がしめされた. 未固定の葯を用いることにより,小胞子の大きさを正確に測定した. 1葯胞中における小胞子の直径は,正常な葯では非常に均一であるが,冷温処理をうけた葯ではひろい範囲に分布している. 生育にともなう小胞子の直径の変化を減数分裂期から小胞子後期まで測定した. 以上の観察結果から,葯を固定しないで観察することの有用性,利点,欠点などについて論議した.