日本作物学会紀事
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イネの小胞子初期冷温処理による雄性不稔 : 第21報 危険期およびその後における小胞子および葯の体積の測定
西山 岩男
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1982 年 51 巻 2 号 p. 172-177

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抄録

葯および葯腔の体積を, その長さと幅とから近似的に計算する方法を考案し, この方法を用いて, 冷害危険期である小胞子初期およびその後のイネの葯について測定を行った. 小胞子の直径は4分子期に16.2μm, 中後期(小胞子後期を3分した中央の時期)に34.7μmであった(第1表). 小胞子の体積は4分子期に2.23pl (ピコリットル), 中後期に21.9plであった(第1表). したがって, 小胞子の直径はこの期間に2倍以上, 体積は10倍ちかく増大したことになる. 葯あたりの小胞子の数は, 中期の測定で1,070であった. 以上の数字から計算すると, 葯あたりの全小胞子の体積は4分子期に2.4nl(ナノリットル), 中後期には23.4nlになる(第5表). 葯の体積は4分子期に32.4nl, 中後期に69.0nlであった(第3表). 1葯中の4葯腔の全体積は4分子期に12.6nl, 中後期に36.7n1であった(第5表). したがって, 葯の体積はこの期間に2倍以上, 葯腔の体積は約3倍ほど増大した. 1葯中の全小胞子の葯全体に対する体積比は, 4分子期の7.4%から中後期の33.9%に増大した(第5表). また4葯腔に対する全小胞子の体積比は, 19.0%から63.8%に増大した(第5表). この63.8%という値は, 小球を一定の空間に最密充填したときの全小球と空間の体積比である74%に対して86%であり, 葯腔の体積を求めるこの方法はよい近似を与えていると考えられる.

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