日本作物学会紀事
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ソルガム穀粒タンニンの蓄積パターンと環境要因との関係
星野 次江DUNCAN R. R.
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1982 年 51 巻 2 号 p. 178-184

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抄録
鳥害抵抗性一代雑種4品種を用い, 登熟期における穀粒タンニンの蓄積パターンと環境要因との関係を検討した. 得られた結果の概要はは次のようである. タンニン含量(%)は開花後10日(最初のサンプリング)に最も高く, のち急激に減少し, その後60日まで漸次, 減少しつづけた. この減少パターンは品種および播種期によって有意に異なるが, いずれも逆関数式によく適合した. 1粒当たりタンニン(mg/seed)は品種や播種期によって異なり, 開花後10日, 25日あるいは30日に最も高い値が得られた. この蓄積パターンは晩播のDeKalb・BR-64, BR-54を除き, 一次, 二次あるいは三次回帰式に適合した. 土壌水分4処理(T1~T4)のうち, T2(開花から開花後20日まで十分な灌水を行い, のち45日まで干ばつ下においた処理)のタンニン含量はT4(全期間の干ばつ処理)およびT3(開花から開花後20日まで干ばつ下におき, のち十分な灌水を行った処理)に比べ有意に高かった. 十分に灌水したガラス室内(T1)と室外(T5)で生育させたものの比較では, 登熟初期にはT5のタンニン含量が明らかに高かった. しかし, 登熟後期にはT1とT5との間に差異は認められなかった. 登熟全期間を紙袋で覆われた粒のタンニン含量は自然光下のものに比べ約半量であった. 開花後20日から45日までの適温処理(T6:28℃)と高温処理(T7:35℃)との比較では, 処理5日後(開花後25日)のタンニン含量はT7が高かった. しかし, その後T7のタンニンは速やかに減少し, T6とT7との間に差異は認められなかった. 登熟初期の水分ストレスや遮光は穀粒タンニンを低下させ, 登熟後期の水分ストレスや高温はタンニンの速やかな減少を阻害した. しかし, いずれの処理条件下でもタンニン蓄積パターンは逆関数式に適合した. 以上の結果から, 鳥害の大きい登熟初期に高タンニンで, 飼料として利用する登熟後期に低タンニンになるような栽培管理, 品種の選定や育成の可能性が示唆された.
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