日本作物学会紀事
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新芽摘除による茶越冬葉の光合成機能の変化
青木 智
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1982 年 51 巻 4 号 p. 439-444

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抄録

茶越冬葉の光合成速度は新芽生育に伴い減少する. そこで新芽を萌芽前と萌芽後に摘除して, 越冬葉の光合成機能の変化を調べた. 一年生苗を用いて新芽萌芽前(3月23日)と一心三葉期(4月21日)にそれぞれ新芽と一心三葉を摘除する区および無処理区を設けた. 前年の秋に展開し越冬した古葉の光合成速度, 全窒素量, 可溶性蛋白質量, フラクション-1蛋白質量を経時的に測定した. 無処理区の光合成速度は新芽の萌芽後に減少した. 可溶性蛋白質量とフラクション-1蛋白質量は光合成速度と同様に変化し, 後者(r=0.909, 2.5%水準で有意)は前者(r=0.725)に比べて光合成速度と一致して変化した. 全窒素量と光合成速度には関係はみられなかった(r=0.254). 一心三葉期に新芽の全てを摘除しても越冬葉の光合成速度は無処理区とほとんど同様に減少した. 全窒素量と可溶性蛋白質量は新芽摘除により上昇およびやや減少した(光合成速度との相関はそれぞれ, r=-0.892, r=0.929). しかし, フラクション-1蛋白質量は無処理区と同様に処理後も減少して, 光合成速度とは高い相関(r=0.963, 5%水準で有意)を示した. 新芽萌芽前に新芽を摘除すると, 光合成速度は徐々に上昇し, その上昇は5月6日まで続いたが, その後減少した. 光合成速度はフラクション-1蛋白質量と高い相関(r=0.804)を示した. 光合成速度は全窒素量(r=-0.616)と可溶性蛋白質量(r=0.010)とは相関を示さなかった. 越冬葉の光強度に対する光合成速度曲線の初期勾配は新芽の生育程度, また新芽の有無にかかわらず, ほとんど変わらなかった. 以上の結果より, 越冬葉の光合成速度は新芽生育に伴い不可逆的に減少し, この減少は新芽萌芽前後に始まると推定された. また越冬葉の光合成速度の変化は主にフラクション-1蛋白質量の変化で説明できた.

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