日本作物学会紀事
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葉身透明化法による水稲第2葉身の結合脈の観察
河野 恭広中田 公三巽 二郎
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1982 年 51 巻 4 号 p. 445-454

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抄録

水稲葉の脈系を観察するために, 全葉身の透明化法を検討した. この方法を用いて高い窒素含量の種子からのめばえの第2葉身(HN)と, 低い窒素含量の種子からのめばえの第2葉身(LN)の脈系を比較観察した. 全葉身の脈系を観察するのに, もっとも鮮明な標本は, 葉身を氷酢酸・95%エタノール混合液(1:3)-85%乳酸-抱水クロラール飽和エタノールの順序で処理する方法によってえられた. 葉身の先端部または葉鞘中へ走行しない縦走維管束のほとんどは, 1ないし2本の細脈によって隣接する1ないし2本の縦走維管束と結合した(第1, 2, 3図). 結合脈の数はLNよりもHNで多かった. 両葉身の中央部における結合脈の数は, 葉身先端部や基部にくらべて多かった. しかし, 両者の葉身のそれぞれ対応する部位間には結合脈の密度だけでなく, 結合脈の数でも統計的有意差はなかった. 両者の葉身で結合脈の密度は, 葉身基部より葉身先端部で明らかに高く, その分布パターンは向基的に低くなる傾向を示した(第1, 2表). HNとLNで結合脈間の距離は, 向基的に大きくなった. しかし, この距離はけっして縦走維管束間の距離より小さくなることはなかった(第3表). HNとLNともに, 葉身中肋をはさんだ左右両側の葉身部分の結合脈の数は, わずかに相違した(第4表). 各維管束の長さの合計は, 明らかにLNよりHNで大きかった. これは主として縦走小維管束の全長の増加によっていた. 両葉身とも縦走大維管束, 縦走小維管束および結合脈のそれぞれの全長は, 全維管束長の約26%, 55%および19%を占めていた(第5表). HNとLNともに, 長い表皮細胞の長さと幅は, 向基的に増加した. すなわち細胞密度は向基的に減じ(第6表), 結合脈の密度と密接に関係していた.

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