抄録
ダイズ葉に種々の強度の光を照射し, 照射光強度と葉の光透過率との関係を波長別に調査することにより, 光透過率変化が葉緑体配列変換により起こっているのかどうか, また, 葉緑体配列変換が光合成の光阻害回避機構の一つとして考えられるかどうかを検討した. 1. 葉の光透過率は照射光強度に応じて変化し, その変化程度は波長により異なっていた. 照射光を弱光から強光へ, もしくは強光から弱光へと変化させた場合, 葉緑体に強く吸収される波長域ほど光の透過率が大きく変化した. しかしながら, 葉を暗黒中から弱光下に移した場合には, 葉緑体に吸収されにくい波長域の光の透過率もかなり大きく変化した. 2. 照射光強度が300μE/m2/sec以下の弱光域では光透過率は低い値を維持するが, 照射光強度が300μE/m2/secを越えると光透過率は照射光強度の増大に伴って顕著に増大した. 3. 以上の結果から, 強光下におけるダイズ葉の高い光透過率は葉緑体配列変換によるものと推察され, これが光合成の光阻害を回避する機構の一つとして機能している可能性が明らかにされた.