日本作物学会紀事
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水稲の再生に及ぼす肥料3要素およびそれらの施用時期の影響
一井 真比古岩本 喜文
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1983 年 52 巻 4 号 p. 468-474

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抄録
水稲の飼料化栽培, 再生を利用した二期作栽培および農業形質の間接検定手段としての利用において再生は重要な特性である. 再生は遺伝的変異を有する特性であるが, 株および根の内的および外的環境条件によっても変異するであろう. そこで肥料3要素およびそれらの施用時期が再生に及ぼす影響について検討した. 水耕法により栽培し, 出穂後10日に地上5cmで地上部を刈取り, 刈取り日を中心に前および後10日ずつの計20日間, N, PおよびK量の異なる10条件下で培養した. なお刈取り後11日以降の培養条件はいずれの区においても同じであった. 刈取り後40日に再生茎率, 再生草丈および再生重を調査した. 刈取り前における水耕液のN, PおよびK量が異なったにもかかわらず, 再生茎率, 再生草丈および再生重のそれぞれはほぼ同じであり, 刈取り前における施用量の効果は認められなかった. 刈取り後における施用量の効果は認められ, N, PおよびK量が多くなければ, 刈取り後10日の再生茎率および再生草丈, ならびに刈取り後40日の再生茎率および再生重はそれぞれ顕著に増大した. しかしながら刈取り後40日の再生草丈は, 刈取り後10日間の施用量が異なるにもかかわらずほぼ同じであった. 再生草丈に及ぼす刈取り後における施用時期の影響は再生茎率や再生重に比べて小さいようであった. また施用量の増加に伴う再生重の増大は再生茎率の増大に依存すると思われた. N欠除の効果がもっとも顕著であり, N, PおよびKのいずれをも施用しないことによる効果はN欠除の効果とほぼ同じであった. P欠除の効果はN欠除のそれより小さく, さらにK欠除の効果は認められなかった. 以上の結果から, 刈取り後の施肥条件, とくにNおよびP量により再生が変異すると考えられる. また再生を利用した二期作栽培などでは, 刈取り後直ちに施肥するのが適当と思われる.
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