抄録
インドネシア国, ランポン大学農学部の圃場で栽培したキャッサバについて, 個葉の光合成作用を圃場条件下で測定した. 供試品種は2品種, 供試個体は栽植後約5か月と8か月のものである. それらは, 葉面積指数3.2から3.6の群落を構成していた(Table 2). 個葉の光合成速度は照度30klxまでは, 光強度に比例するが, それ以上ではほぼ一定値をとり, 日中低下現象は認められなかった. また, 温度-光合成曲線は気温28℃附近に最適値を認めたが, 24℃より33℃の範囲では光合成速度に大差はなかった. 平均光合成速度の範囲はCO2濃度280ppmにおいて10~13 mgCO2/dm2/hであり, 改良半葉法で求めた最高値は18 mgCO2/dm2/haであった. 個葉の光-光合成曲線をP=bI/1+aIの双曲線式で示し(但し, P: 総光合成速度m9CO2/dm2/h I: 照度klx)定数a, bをそれぞれ0.0715, 1.11として一般化した(最高値: 5.5mgCO2/dm2/h). さらにMONSI and SAEKI)の式に上記a, b値と葉の光透過率0.15および吸光係数0.7を代入して, 種々の葉面積指数についての光強度と総光合成との関係を求めFig. 7に示した. キャッサバの作物体各部位の呼吸速度は, 葉身が最も高く, 次いで葉柄と緑色を呈する若い茎であり, 木化のすすんだ茎の基部や塊根は低い値をとる(Table 5). 葉群1m2を構成する葉身と葉柄との呼吸は, 温度28℃において1.55gCO2/haと推定されたので, この値とFig. 7の数値より種々の照度のもとでの, 葉面積指数と純光合成との関係を求めFig. 8に示した. 同図より, 日中に最も多く遭遇する照度の下では, 最適葉面積指数が3.5附近にあると推定され, それは1日当たり102.0kg/haの乾物を生産することとなる. これは, 塊根乾物重1kg/m2をもつ群落を想定し, 夜間の総呼吸が13.4gCO2/n2・field/dayとして計算されたものである. キャッサバ群落は吸光係数がイネ科作物に比して大きな値をとるので, 最適葉面積がそれよりも小さいと考えられる. また, 葉群の底部にある葉は下方から受ける光を利用する効率が高いことを考えると, 現地で行われている混植は葉面積指数が低く抑えられるので, 群落構造のうえからみれば合理的であるといえる.