日本作物学会紀事
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キャッサバ塊根の収穫後の生理的変質とエチレン生成 : 特に, 地上部刈込み処理に関連して
広瀬 昌平DATA E.S.田中 喜之瓜谷 郁三
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1984 年 53 巻 3 号 p. 282-289

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抄録

キャッサバ塊根は収穫後に生理的変質によって, 急速にその品質を低下する. そして, 収穫期2から3週間前の地上部刈込み処理(Pruning)が, 生理的変質の進展を遅延させる効果があることが知られている. 本研究では, この刈込み処理に関連して, 塊根切片における呼吸とエチレン生成の変化を調べた結果, 次の点が明らかになった. 1. エチレン生成は収穫後15~16時間目に始めて検出され, 24時間後にその生成量は最高値に達した. キャッサバのエチレン生成は甘藷のそれに比べて高い. 2. エチレン生成量に品種間差異が認められた. また, 生理的変質の進んだ塊根片はそれが進んでいないものに比べてエチレン生成量は多い. 3. 刈込みと無刈込み処理個体からの塊根片のエチレン生成量にわずかな差異が認められた. 4. 生理的変質の進展に対する内生的エチレンの効果を明らかにするため, 塊根片がエチレン吸収剤で処理された. その結果は内生エチレンが生理的変質の進展に対し直接的な効果がなかった. 5. 外生的エチレンが呼吸や生理的変質の進展に対し如何なる影響をおよぼすかを調べるために, エスレル処理を行った. エスレル処理を受けた塊根片の呼吸は無処理のものに比べて何の差異も認められなかった. 6. 生理的変質はエスレル処理した塊根片でわずかに認められ, この傾向は刈込みと無刈込み処理でも同様であった. しかし, エチレン生成と呼吸量に関して刈込みと無刈込み処理間で, はっきりした差異は認められなかった. 7. 供試サンプルが切断切片(1.5cm の厚さ)であり, その機械的傷害が刈込み処理の効果を減少させたことが推測された.

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