抄録
葉緑素 b が極端に少ないイネの淡緑色変異系統, CMV-44 と MGS-859 について, 葉緑素 b を全く含まないオオムギの変異系統, Highkin No.2 (H-2) と対比しながら, 葉緑素 b の存否を調べた. 分光光度法による葉緑素 a/b 比の値は, CMV-44, MGS-859 および H-2 でそれぞれ平均37.6, 20.2および17.7であった. 抽出液の吸収スペクトルをみると, イネ, オオムギとも変異系統では葉緑素 b に基づく波長帯での吸収が明らかに低かった. 生葉の2次微分吸収スペクトルにおいて, CMV-44では葉緑素 b の存在を示す吸収が全く認められなかった. 薄層クロマトグラフ法によると, CMV-44 と H-2 では可視光および紫外光下ともに葉緑素 b の位置に全くスポットが現われなかったが, MGS-859 では葉緑素 b の位置に可視光下では黄色スポット, 紫外光下ではかすかに蛍光が認められた. 以上から, イネの CMV-44 はオオムギの H-2 と同様に遺伝的に葉緑素 b を完全に欠く突然変異系統であると結論した.