抄録
葉の葉緑素含量を反射光を用いて非破壊的に推定するのに役だつ指標を明らかにするため, イネ, コムギおよびオオムギの葉について研究を行った. 葉の半球反射率スペクトルは, 葉緑素に依存する可視域(V, 500~650nm)と葉緑素に無関係な近赤外域(IR, 750nm以上)の二つの十分離れた帯域に分けられた. IRを800nm, Vを550nmとした場合に, 両帯域における反射率(ρ)の差(ρ800-ρ550)および比(ρ800/ρ550)とも単位葉面積当たりの葉緑素含量(Chl/LA)に対する相関が最も高く, 相関係数(r)は全試料葉を含めてそれぞれ0.920および0.970であった. Chl/LAに対する相関は一般に反射率の比の方が差よりも高く, V帯域の波長(λ)を変化させた場合の反射率の比ρ800/ρλとChl/LAとの間のrは, λが530~630nmの範囲ではほぼ一定の高い値(0.9以上)を示すことが供試各作物および全体について認められた. また, ρ800/ρ550の値は, 吸光法に基づく葉緑素計の示度との間にもきわめて高い相関(r=0.968)を示した. 以上の結果から, 波長約530~630nm間の反射率に対する750nm以上のIR反射率の比は, 少なくとも供試したイネ科作物葉のChl/LAを推定するための指標として最もすぐれていることが明らかになった。