日本作物学会紀事
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作物群落用反射スペクトル解析装置の開発 : 第2報 1,100, 1,200nm反射率を用いた水稲生体量推定の試み
芝山 道郎棟方 研
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1986 年 55 巻 1 号 p. 28-34

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抄録

室内用の積分球付分光光度計を使用して、重ね合わせたろ紙やゼラニウム葉の近赤外域反射率を測定したところ, 1. ろ紙や葉の枚数と近赤外全域 (800~1,300 nm) の反射率との間に比例関係が認められた. 2. 1,200 nm付近の反射率の低下が重ねたろ紙や葉の枚数が増えるとともに大きくなり, またそれが葉緑素の存在の影響を受けにくいことが推量された. これらの知見をもとに, 前報で紹介した作物群落用反射スペク卜ル解析装置を使用して, ポット栽培の水稲幼植物集団と, 屋外のライシメータに栽培した水稲の成熟群落の分光反射率を測定・解析した. その結果として 1. 新たに見い出された 1,200nm付近の反射率は、実際の水稲群落でも, その乾物重推定上, 有効であることがわかった. 2. 1,100/1,200nm バイバンド比は, 従来, 最もよく使わわてきた、近赤外/赤バイバンド比よりも, 高密度な作物集団に対して, 生体量 (乾物重) 推定上, 精度が上まわる傾向のあることが確められた. 以上のことから, 圃場における高い繁茂度を示す作物群落の生体量を推定する手法として, 近~中小外域の分光反射率測定の有用性が示唆された.

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