抄録
サツマイモ苗の取り置きが苗の発根に及ぼす影響をコガネセンガンと高系14号について2年間調査した. 苗の取り置きは1983年は18℃, 90%RH, 1985年は14.5℃, 95%RH, それぞれ弱光下で, 0, 5, 10, 15日間行った. 発根実験は, 土耕により, 28/20℃の制御環境下で行った. 得られた結果は次のとおりである. 1. 取り置き期間が延びるにしたがい苗の生重は減少し, 苗の乾物率は増加した. 苗の下位葉は10日目から枯死し始め, 15日目にはその2~3葉が枯死した. 取り置き中に苗の発根が見られ, 1983年は10日目, 1985年は15日目に最大に達した(第1図). 2. 取り置き処理により挿苗1週間後の苗当たり根数は減少した. 逆に根の伸長は取り置き処理により促進され, 平均根長が増加した. このため総根長も取り置き処理により増加した. 根の乾物重も取り置き処理で増加したが, 15日取り置くと減少する傾向が認められた. 挿苗1週間後の展開葉数は15日取り置き区で最も少なかった(第2図). 3. 各区の最大根15本の組織学的観察によると, 根の発育ステージは取り置きしたものの方が進んでいた(第3図). また, 1次形成層の活性も取り置き区で高かった. 中心柱の木化は15日取り置き区で進んでいた(第1表). 以上の結果から, サツマイモ苗の5-10日間取り置きは, 苗の活着及び塊根分化を促進することが示唆された.