1988 年 57 巻 1 号 p. 105-111
作物群落における葉身クロロフィル(Chl)濃度を遠隔推定するための基礎として, 数種作物について群落表層葉身群のChl濃度の面的分布および分光反射率の面的分布を解析した. 分光反射特性に基づいたChl濃度推定モデルの作成とその問題点についても検討した. 群落上層に位置する活動中心葉のChl濃度は, ほぼ正規分布に従った(第2図). ドラムスキャナによるカラー写真の光学的濃度解析からみた群落表層葉群の分光反射率は, 視野の取り方によっては2山型の分布となった. 分光反射率の分布は, 実際の葉群のChl濃度の分布特性とは一致しなかった(第3A~B図, 第4A~B図). 写真解析における光学的濃淡の平均値には, 特に葉影の有無が強く影響し, 一枚の葉の中でも角度によって濃度は微妙に変化した(第3C図, 第4C図). 影の部分をできるだけ避けるような視野を選ぶことによって, 平均値とモードの差は改善された(第4D図). トウモロコシとダイズにおいては, 550nmの分光反射率は葉身Chl濃度に対応して最も大きく変動し, 逆に750~1,050nmの反射率は群落のChl濃度に最も影響されなかった. 個葉Chl濃度と分光反射率比ρ850/ρ550の間には, トウモロコシでr=0.67, ダイズでr=0.83の相関関係が得られた. ρ850/ρ550と実測した葉身Chl濃度の関係は作物によって大きく異なり, 作物間の差には比葉面積(SLA)が強く関係していた(第1表, 第5図).