ポットで土耕あるいは水耕栽培した水稲を用いて, 葉の水ポテンシャル(以下Ψlという)と空気湿度とをそれぞれ独立に変えて, 拡散伝導度, 光合成速度に対するΨlと飽差の影響を検討した結果, 次の点を明らかにし得た. (1)拡散伝導度, 光合成速度はΨlが約-1.5barから約-5barに低下するに伴って急激に減少し, それぞれ最大値のほぼ25~40%, 50~60%と著しく小さくなった. (2)Ψlが約-5barよりさらに低下するとΨlの低下に伴う拡散伝導度, 光合成速度の減少程度は小さくなった. (3)拡散伝導度, 光合成速度は, Ψlが高い時にはΨlが等しくても飽差が大きいと減少し, 空気湿度はΨlを介さず拡散伝導度, 光合成速度に直接影響した. (4)この空気湿度の直接の影響はΨlの高い葉身ほど大きく, Ψlが-5bar以下に低下すると認められなくなった. これらの結果と拡散伝導度と光合成速度との関係とから, 光合成速度は, Ψlが高く飽差の影響を著しく受けている時には主として気孔を通じての葉内へのCO2供給速度によって規制され,Ψlが低下し拡散伝導度が小さくなっている時には葉肉細胞における光合成系の活性の低下も加わって減少することが推察された.