津野によって考案された簡易光合成測定法をインド, ハイデラバード地方における栽培水稲の光合成測定に応用した. 実験材料には, Vijayamahsuri, Sonamahsuri, Basmati, HR 59およびHR 35を用いた. Vijayamahsuriはアンドラプラデッシュ州の, またSonamahsuriはインド国立稲作総合研究所の奨励品種である. 香り米のBasmatiは市場価格も高く, アラブ諸国への輸出用として栽培されている. これらの栽培品種はインド・デカン高原で手植えの慣行法で栽培されていた. 光合成測定には, 慣行法で栽培されていた水稲の完全展開の葉身中央部約12cm2を用いた. 光源は自然光とし, 光合成測定と共に葉緑素含量も測定した. CO2飽和水を用いた温度-光合成曲線より最適温度は日本型水稲と同じ38℃であった. 改良品種のSonamahsuriとVijayamahsuriは在来品種のBasmatiに比較して光合成速度が高かった. また, 改艮品種は弱光域における光利用効率が高かった. 光飽和点は改良および在来品種ともに約20 klxであった. CO2飽和水の交換によって, 光合成速度は再び高い値を示した. 各葉位の光合成速度は葉緑素含量と密接な関係にあった. また, 光合成速度と葉緑素含量との間には高い正の相関関係が見られた. 簡易光合成測定法は, 簡便で, 安価で, しかも測定精度が高く, 現場で容易に適用しうることから, 赤外線ガス分析計等の測器の整備困難な事情のもとでの測定法として大いに役立つものと思われる.