イネ科作物の中で, 耐湿性程度の大きい陸稲(農林11号)と, 耐早性程度の大きいトウモロコシ(ゴールデンクロスバンタム)を, 湿潤(M区), 乾燥(D区), 湛水(W区)の土壌水分条件下で, 幼植物期から出穂期まで生育させ, その生長を生長解析によって比較, 検討した. 乾物量, RGRの推移によって, 両種の生長を比較すると, 陸稲は乾燥条件下よりも湛水条件下で比較的良い生育を示し, トウモロコシではその逆の傾向を示した. 陸稲のRGRの土壌水分条件による差異は, NARとLARの両方に, トウモロコシでは主にNARの差異によく一致した. そこでNARと関係の深い葉身中の窒素濃度を調べたところ, 両種のNAR, そしてRGRとの間に密接な関係が認められた. また, 根の機能を反映していると考えられる, 各個体の葉身の窒素含量の根数に対する比とNARを比較すると, それらは両種ともよく一致した. さらに根のRGRとNARとの間にも密接な関係が認められた. 以上の結果は, 陸稲とトウモロコシが湛水・乾燥条件下で示した特徴的な生長反応は, 両種の耐湿性・耐早性程度の違いをよく反映しており, そして, その生長反応は, 根の機能・生長に強く依存していることを示している.