1988 年 57 巻 1 号 p. 199-204
作物葉に含まれる光合成単位の量(P700量)は, 炭酸固定に心要な還元力(NADPH2)と高エネルギー化合物(ATP)の供給能力を, 光合成単位のサイズ(クロロフィル/P700比)は, 集光効率を示すと考えられる. 慣行的なP700の定量法は, クロロプラス卜を分離してP700の酸化還元差スペクトルを測定するため手順が複雑で, 測定時間が長く品種選抜に適用するためには不都合である. そこで本研究では, 閃光分光分析器を新たに開発し, 生葉片を用いて励起光照射によって703 nmに誘起されるP700の吸光度変化を非破壊的に測定してP700の含量を定量した. この手法で求められたP700の含量は, 慣行的化学的手法で求めた値とよく一致し, 測定に必要な時間が顕著に短縮された. さらに, クロロフィルa/b比の高い作物葉は, 光合成単位のサイズ(クロロフィル/P700比)が小さいことが明らかとなった.