抄録
ネピアグラス (Pennisetum purpureum, 品種Merkeron) の生長の温度反応, および, 低温による生長抑制を受けた後の好適な温度条件下での生長の回復過程を, 主として, 葉の生長および乾物生産の面から検討した. 昼夜温が30/27℃, 23/20℃, 15/12℃, 自然光の人工気象室で15日間の温度処理を行ない, その後, 昼/夜温が32/26℃, 自然光のガラス室に移しで, 各温度処理個体を同一条件下で, 33日間にわたり育てた. 温度処理期間中は, 低温ほど, 葉期の進み, 葉面積の拡大および乾物生産が強く抑制され, 処理期間中の1個体当りの全植物体乾物増加量は, 高温区:36.6g, 中温区:24.6g, 低温区:9.1gの相違を生じた. ガラス室では, 前歴温度が低いほどRGRが高いことにより, 植物体全乾物増加量は温度前歴によらずほぼ同程度となり, 温度処理期間中の生長の抑制に対する補償的な生長がみられた。この補償的な生長は, 前歴温度が低いほど, 温度処理終了時における1茎当たりの未展開葉数が多く, 稈のTNC含有率が高いことによって, ガラス室における展開葉数の増加速度が大きく, それに伴って, 葉面積の拡大が促進されるとともに純同化率が高く維持されることによると推察された.