日本作物学会紀事
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57 巻, 4 号
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  • 松葉 捷也
    1988 年 57 巻 4 号 p. 599-607
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの茎葉生育の発育形態的な規則性を明らかにするために, 直播で1ポット1株1本立てにした個体における分げつの出現節位を4年間詳しく調べた. 分げつは各母茎上で下位のものから順に出現してくるので, 個体内の各母茎上における最終分げつの出現節位の位置関係によって分げつの出現範囲が定められ, 理論的な最大分げつ数も決定される. 従来この位置関係の定説的知見は, 同伸葉理論の「標準株」によって与えられていた. しかし, 実際の最終分げつの出現節位は, この定説的知見とは系統的に異なり, かつて八柳らが仮定した最終分げつの出現節位にほぼ一致した. この本報の試験結果を「標準株」からみてみると, 最終分げつの出現節位は, 一次分げつ上で1節上に, ニ次分げつ上で1, 2節上に, 三次分げつ上で2, 3節上にと規則的にずれ, かつ出現しないはずの分げつが高次分げつになるほど数多く出現した. これと同様とみなしうる事例はすでに二, 三報告されている. したがって, 最終分げつの出現節位は, 原則として八柳らの仮定に一致するとみるのが妥当であると判断した. 八柳らの仮定に基づく最大分げつ数(T max. と略称)は, 一般に一次最終分げつの出現節位を第n節とすれば, T max.=2nで与えられることが分った. 三次分げつまでの範囲でみても, この最大分げつ数は「標準株」のそれの1.5~2倍(6≦n≦13)あり, 個体の分げつ力は従来考えられていたものよりかなり大きいことが分った. また, nの値は施肥量に対する変動がきわめて小さいので, 分げつ力を評価する遺伝的指標にもなりうると考えられた.
  • 沢畑 秀
    1988 年 57 巻 4 号 p. 608-613
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    地下部の環境条件の差異が塊根肥大に及げす影響について, 塊根に対する直接的影響と地下部の環境条件が養分吸収などに影響して関与する間接的影響とを区別して検討を加えた. 塊根部, くき根(地中の茎から出ている吸収根)部及びいも根(塊根先端から出ている根)部のそれぞれに別個の環境条件を与えることができる実験装置を用いて, 塊根部は土耕として土壌の種類及び土壌水分処理, くき根部及びいも根部は礫耕として養分処理を行った. これらの処理は, 塊根形成後の塊根肥大期に加え, その処理に対する生育反応から塊根肥大特性を検討した. 1. 実験装置(礫耕)のサツマイモは健全に生育し, その収量は圃場の標準栽培の収量より多かった. また, 塊根部の三相分布及び土壌水分の処理間差は大きかった. 2. くき根部及びいも根部に対する養分処理が塊根重に及ぼす影響は比較的大きく, 特にくき根部処理において大きかった. 一方, 塊根部に対する土壌の種類及び土壌水分処理が塊根重及び塊根乾物率に及ぼす影響は比較的小さかった. 3. これらの結果をもとにして, 地下部環境条件が塊根肥大に及ぼす影響の作用機作について検討し, 塊根肥大期に塊根部に与えた地下部環境条件が塊根肥大に及ぼす直接的影響は小さいことを明らかにした.
  • 松葉 捷也
    1988 年 57 巻 4 号 p. 614-620
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの茎葉生育の発育形態的な規則性を明らかにするために, 直播で1ポット1株1本立てにした個体における各分げつの葉数を4年間詳しく調べ, 主稈総葉数との関係を分析した. 従来, 分げつの葉数決定は同伸葉理論に基づいて説明されてきた. しかし, その説明とは根本的に相容れない規則的事実が, 本報の試験で明らかになった. 同一試験区で出現節位を同じくする分げつの葉数は, 基本的には主稈総葉数の変異(1葉の差)に関係なく同じになり, その変異幅は基本的に1葉の範囲に止まっていた. また各分げつの葉数は, 総葉数が少ない方の主稈を基準にした場合, 同伸葉理論による理論葉数に比べてそれぞれの次位と等しい数だけ多くなるか, あるいはこの多くなった葉数より1葉少なくなっていた. この試験結果の分析から, 分げつ体系の基幹部における母茎・分げつ間では, 分げつの葉数(前出葉を含まない)は, その分げつの出現節位より上の母茎葉数より1葉少なくなっており, この関係が連続的に反復していることが明らかになった. またこの規則性に基づけば, 同一試験区における任意の分げつの葉数は次の公式で求められる. すなわち, 前述した, 多い方の分げつの葉数をL max.とし, 主稈総葉数の内多い方をN, 少ない方を(N-1)とすれば, L max.=(N-1) - (任意の分げつの次位の数) - (任意の分げつの表記記号の各数字が示す数の和).
  • 中村 茂樹, 沢畑 秀
    1988 年 57 巻 4 号 p. 621-626
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    多収性大豆品種の特性について, 特に乾物分配効率に関して検討している一連の試験の一つである. 葉, 葉柄および莢を支える茎と, それらを支える根の2形質を取り上げ, 多数品種の根と茎の乾物重を測定し, 根重に対する茎重の比(茎根重比)の品種間差および茎根重比と諸形質の関係について検討した. その結果, 以下のことが明かになった. (1)茎根重比は茎重や根重より安定した形質である(第2表, 第3表). (2)茎根重比はその比の高い品種の値が低い品種の値の2倍以上あり, 比に品種間差が認められる(第1表, 第2表, 第5表). (3)茎根重比は生育日数および収量と正の相関関係にあるが, 収量の場合, 熟期の早晩性の影響を除くと, 早生種においては相関関係が認められない(第4表, 第5表). (4)近年の育成品種の多くは茎重および根重がともに大きくなっているが, 根重増加に比べて茎重増加が少なく, 相対的に茎根重比は小さくなっている(第6表, 第2図). 今後の一層の多収化には, 特に茎が太く多分枝になる品種の育種技術および栽培技術の検討が重要である.
  • 中元 朋実, 町田 寛康, 松崎 昭夫
    1988 年 57 巻 4 号 p. 627-630
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の1次枝梗着生穎花の開花の早晩と完熟時の粒重との関係について検討した. 穂上位置を異にする2つの穎花間で, 開花日の差 (Δt) と粒重の差 (Δw) を調査した. 最も多く観測された開花日の差 Δtmode とその際の粒重の差 Δwmode を基準にとり, 開花日の差の偏差 (Δt-Δtmode) と粒重の差の変化 (Δw-Δwmode) との関係を調べた. 同一の1次枝梗上の穎花間でも (第2図), 異なる1次枝梗上の穎花間でも (第3図), Δt-Δtmode と Δw-Δwmode との間には, 直線の傾きが有意に負の相関関係がみとめられ, 相対的に早く (遅く) 開花する穎花ほど粒が大きく (小さく) なることが明らかになった. 穎花は早く開花するほど養分分配の競合等の点で有利であると考えられた.
  • 大塚 隆, 坂 齊
    1988 年 57 巻 4 号 p. 631-635
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネのムレ苗を防止し, 根の生長を促進するイソプロチオラン(ジイソプロピル-1, 3-ジオチラン-2-イリデンマロネート)の基礎作用特性を明らかにするために, 数種植物ホルモンとの相互作用を調べた. その結果, イソプロチオランは, まず, イネのラミナジョイント・テストで, IAA依存の葉身傾斜角度を顕著に促進した. 次いで, イネ葉片でのクロロフィル保持検定試験ではベンジルアデニンより活性は弱いが, 高濃度で有効であった. しかし, イネ(品種:短銀坊主と日本晴)でのジベレリン生物検定系では, イソプロチオランとGAとの相互作用は認められなかった. 一方, この化合物は幼苗期イネおよび胚誘導カルスの生長・増殖にはむしろ抑制的に作用するが, エチレン生成は顕著に促進した. 以上の結果から, イソプロチオランの生育調節作用は, 植物ホルモンの中でオーキシン活性やエチレン生成の高揚と密接に係わっていることが示唆された.
  • 津田 誠
    1988 年 57 巻 4 号 p. 636-642
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネにおいて, 幼穂発育初期の水ストレスによって登熟期間が変わるかどうかを検討した. 水稲品種コシヒカリを1/5000 aポットにポットあたリ16個体を移植し, 1週間毎に分げつを取り除いて, 主稈のみを湛水栽培した. このような植物に1次枝梗分化期および穎花分化期から期間の異なる10段階の土壌水分ストレスを与えた. 出穂は水ストレスの程度が厳しくなるに従い遅延した. 一方, 出穂後の穂の生長速度は水ストレスによって著しく低下するとともに, 登熟期間は水ストレスが厳しい場合には短くなった. このため, 全生長期間はほとんど水ストレスの影響を受けなかった. 出穂の遅延は水ストレス期間に比例していたけれども, その関係は, 積算水ストレスとの関係ほど密接ではなかった. 以上のことから, 幼穂発育初期の水ストレスに伴い出穂は積算水ストレスに比例して遅れると同時に, 登熟期間は水ストレスが弱いと変わらないものの, 厳しいと短くなると結論した.
  • 三本 弘乗, 稲野 藤一郎, 大門 弘幸, 中條 博良
    1988 年 57 巻 4 号 p. 643-649
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    地力維持や施肥の目的で水田にイタリアンライグラスを施用した場合の水稲の生育に及ぼす影響について生育時期別に検討した. 移植から活着期までの水稲の生育および窒素の吸収は著しく抑制された. その抑制程度は, イタリアンライグラスの分解に伴う土壌の急速な還元化の程度と密接な関連性が認められたが, 施肥窒素量との関連性は認められなかった. この期間の生育抑制の主因は, 土壌の急速な還元化と有機酸による新根の発生と伸長の抑制であると推定した. 活着期以降分げつ盛期にかけても生育および窒素の吸収が抑制されたが, この期間においては, 抑制程度と土壌の還元化程度ならびに施肥窒素量との間には関連性が認められなかった. この期間の生育抑制の主因は有機酸の集積による根系発達および養分吸収の阻害であると推定した. 分げつ盛期以降最高分げつ期にかけては, 窒素の吸収抑制の傾向は認められなくなった. しかし, それまでの吸収抑制によって最高分げつ期における茎数が減少した. 幼穂分化期以降は, 水稲の窒素含有率が高く推移したため無効茎が減少し, 有効茎歩合, 籾数, 登熟歩合ならびに千粒重が増加し, イタリアンライグラスの施用量が10a当たり生草重で2t (風乾重で566 kg) まではやや増収傾向となった. 異常穂や不稔の発生はとくには認められなかった.
  • 三本 弘乗, 稲野 藤一郎, 大門 弘幸, 中條 博良
    1988 年 57 巻 4 号 p. 650-654
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水田において, 15Nをトレーサーとして用いてイタリアンライグラス, 肥料および土壌の各由来別窒素の水稲による吸収経過を検討した. 活着期における肥料由来窒素の水稲による吸収量は極めて少なく, 施肥窒素の利用率は1%以下で, 施肥窒素の活着期における生育への影響は小さかった. 施肥窒素は, 施用したイタリアンライグラスの分解のために早期から微生物によって優先的に利用され, その結果活着期における水稲の全吸収窒素量に占める施肥窒素の比率が低下した. 一方, イタリアンライグラス由来の窒素も, すでに活着期から施肥窒素と同時に水稲によって吸収されることも確認された. 分げつ盛期においては, イタリアンライグラスの施用によって施肥窒素の吸収抑制が最大となった. しかし, イタリアンライグラス由来窒素の寄与率は分げつ盛期において最大であった. 出穂後の水稲の地上部窒素含有率は, イタリアンライグラスの施用によってもたらされた土壌ならびに肥料由来の窒素の後ぎき的な効果に, イタリアンライグラス由来の窒素の効果が加わって高く推移し, 水稲の登熟期の生育が良好となった.
  • 折谷 隆志, 松本 栄一
    1988 年 57 巻 4 号 p. 655-665
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    本研究はカリウム(K)とリン(P)の欠乏の各条件下で基肥窒素レベルと窒素追肥がソルゴーの再生長と窒素(N)代謝に及ぼす影響を調査した. 1. 実験Iでは, 刈取り乾物重は適当な基肥NレベルとN追肥の組合わせにより効果的に増加したが, 多N条件下のN追肥によりかえって減少すると共に家畜にとって有毒な青酸含有率が顕著に増加した. このような作物体のN反応はK或いはP欠乏下の多N条件下において強くあらわれた. なお, Nの追肥時期の判定方法として作物体の, とくに葉緑素と出液のアミノ酸レベルに着目してこれらの関係をみた結果, 葉緑素レベルよりも出液のアミノ酸含量を指標として診断するほうが, より適切であると考えられた. 2. 実験IIでは圃場における追肥Nの適量は5~10kg/10aが適当と考えられた. なお, 多Nレベル下においてKやPが欠乏している場合には, とくに出液のP濃度が著しく低下し, 体内的に遊離アミノ酸の増加蓄積が起り, これらに伴って葉身または茎の青酸や硝酸態Nの顕著な増加が引き起こされた. 3. 実験IIIでは基肥Nレベルの上昇に伴う作物体のN反応として, とくに出液と茎におけるアスパラギンの増大が顕著なことから, 作物体のN栄養診断の場合は出液のアスパラギン検出によってその目的を達成することができる.
  • 中元 朋実, 山崎 耕宇
    1988 年 57 巻 4 号 p. 666-670
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネ科に属する雑穀類で, 系統上はキビ亜科に属するアワ, キビ, ヒエ, トウジンビエ(キビ族), モロコシ(ヒメアブラススキ族), ジュズダマ(トウモロコシ族)およびスズメガヤ亜科に属するシコクビエ(ヒゲシバ族)を対象に, 成熟段階および生育途上における, 主茎上の葉と根相互の量的関係について検討した. 1. シコクビエを除いて, いずれの雑穀類も, 成熟段階における総葉面積/総根断面積の値はほぼ類似したものであった(第2表). 生育の過程を追ってみると, はじめは総葉面積が総根断面積より相対的に増加するが, 次第に総根断面積の増加が顕著になった(第1図). とくに生育の初期においては, 総葉面積と総根断面積の量的関係には作物の種による差異がみられ, 総葉面積に比較した総根断面積は, アワ, モロコシでは小さく, ヒエ, ジュズダマでは大きかった. 2. 成熟段階における葉維管束総断面積/根中心柱総断面積の値の作物間差異は小さく, なかでも, アワ, キビ, ヒエの3者, モロコシ, トウジンビエ, ジュズダマの3者はそれぞれ類似した値を示した(第3表). いずれの雑穀類においても, 生育が進むにともなって, 根中心柱総断面積が葉維管束総断面積に比べて次第に相対的に大きくなる傾向にあった(第2図). 3. 以上より, 主茎の全体に着目すると, いずれの雑穀類においても, 基本的に葉と根の間に共通した量的関係が保たれているが, 作物の種類によってその関係が若干異なっていることが明らかになった. 葉と根の量的関係について, 環境ス卜レス等に対する安全性等の観点からの考察を試みた.
  • 菅 徹也, 山崎 耕宇
    1988 年 57 巻 4 号 p. 671-677
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の生育に伴う根量の変化と, 根量と葉の量との生長相関を解析した. 総根長を分解して, (1次根数)×(平均1次根長)×("分枝係数"), あるいは(総1次根長)×("分枝係数")という積として表した. ここで "分枝係数" は, 総根長を総1次根長で除したもので, 1次根の分枝程度を表す係数である. 葉齢の増加に伴って, 平均1次根長と "分枝係数" は直線的に増加したが, 1次根数, 総1次根長および総根長は指数関数的に増加した. 生育に伴う総根量の増加に対しては, 1次根量の増加が大きく貢献しており, 1次根の分枝程度の増加は寄与度が小さいことが明らかにされた. 出葉転換期を境として生育期間を2分し, それぞれについて相対生長式: log (根量)=k・log (葉面積)+b を算出した. 相対生長係数kは, 出葉転換期の前では1未満であったが, 出葉転換期の後では1を越えていた. このことから, 出穂に至るまでの水稲においては, 出葉転換期付近を境界として, おそらく生育相の転換に対応して, 根と葉の生長相関関係が変化することが示唆された. このような生長相関の変化には, 根量についてみてみると, 1次根の分枝程度の変化よりも, 1次根量の変化の方が大きく関与している可能性が高いと推察された.
  • 安藤 豊, 安達 研, 南 忠, 西田 直樹
    1988 年 57 巻 4 号 p. 678-684
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    圃場における水稲の生育初期の茎数の差異を, 土壌中の交換性アンモニア態窒素量と土壌溶液中のアンモニア態窒素濃度の面から検討した. ポット試験ではゼオライトを添加し, 移植直前の土壌溶液中のアンモニア態窒素濃度を17ppm, 7ppm, 3ppm, および0ppmとした. 圃場試験では, 塩基交換容量(以下, C.E.C. とする)の異なる水田を利用した. さらに, 庄内地域の既存のデータから, 水田土壌のC.E.C. と生育初期の茎数の関係を検討した. 1) ポット試験の高温区(昼25℃/夜15℃)では, 生育初期の茎数は試験区間で差がなかった. 一方, 低温区(20℃/10℃)では, 土壌溶液中のアンモニア態窒素濃度が高いほど, 生育初期の茎数は多くなった. なお, 交換性アンモニア態窒素量はゼオライト添加の有無にかかわらず同一であった. 2) 圃場試験では, 交換性アンモニア態窒素量が同一であっても, C.E.C. の高い圃場では, 土壌溶液中のアンモニア態窒素濃度が低かった. 水稲生育初期の茎数は低温年次には, 土壌溶液中のアンモニア態窒素濃度の高い圃場で多くなった. しかし, 高温年次には, 土壌溶液中のアンモニア態窒素濃度と生育初期の茎数は無関係であった. 3) 水田土壌のC.E.C. と生育初期の茎数との関係は, 低温年次には有意の負の相関が認められた. 一方, 高温年次には, 有意の相関が認められなかった. 4) ポット試験の低温区は, 庄内地域の平年気温とほぼ同様の温度設定であるので, 平年なみの気温条件の年次には, 水稲の生育初期の茎数は, 土壌溶液中のアンモニア態窒素濃度に強く影響されるものとみられた.
  • 後藤 雄佐, 星川 清親
    1988 年 57 巻 4 号 p. 685-691
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    主茎と分げつ間の生長の差, すなわち相対葉齢差2)が茎数増加に与える影響を調べた. 同伸葉理論4)における分げつ出現の規則性は, 厳密に解釈すると, 1個体内の主茎及び全ての分げつで葉齢の進む速さが同じである生長(同周期生長と呼ぶ)を前提とした上で, 抽出中の先端葉の葉位よリ3節位下から分げつが出現(分げつの第1葉が抽出)する規則性によって成立している. しかし, 一般には, 個体の生長には相対葉齢差が認められ2), 個体は同周期生長をしておらず, 同伸葉理論とはずれを生じる. 本報ではポットに1個体植えした水稲の茎数の増加を調べ, 相対葉齢差の影響を除去した茎数増加曲線を構築し, 分げつ性の解析をした. これは, 実際に出現した分げつが同周期生長のもとではいつ出現するかを求めて茎数増加曲線(同周期生長曲線と呼ぶ)を組み立てたもので, その同周期生長曲線は, ササニシキではS字曲線であったが, アキヒカリでは2つの茎数急増期からなることを確認し, アキヒカリでの両急増期の分げつ出現の質的な差を考察した. また, 相対葉齢差の影響をふまえて全ての分げつが出現した場合の茎数増加曲線をシミュレートした. その過程は, まず, 同周期生長での茎数を算出(葉齢は自然数) した. さらに, 母茎先端葉の抽出割合とそれより3節位下の分げつ出現とのタイミングを調べ, その簡略値によって0.1刻みの葉齢で茎数を求めた. それを, ササニシキの実測値を基に仮定した相対葉齢差で補正すると, 葉齢13の時の茎数は, 同周期生長を続けた場合に比べ, 3倍の432本/個体となった.
  • 丸山 幸夫, 田嶋 公一
    1988 年 57 巻 4 号 p. 692-698
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    日本稲, インド稲および日印交雑種合せて49品種を供試し, 窒素施肥に対する生育反応の品種群間の差異を稈伸長, 葉面積増加および穎花数に対する葉面積の相対的増加に着目して解析した. 窒素施肥による稈伸長率, 下位節間伸長率は日本稲が最も大きく, 日印交雑種がそれに次ぎ, インド稲半矮性種は明らかに小さかった. また, 単位長当り稈および葉鞘重の減少率は日本稲より日印交雑種, インド稲半矮性種の方が小さかった. 日印交雑種, インド稲半矮性種の葉面積/穎花数比は日本稲と比較して明らかに小さかった. しかし, 窒素施肥による, 穎花数に対する葉面積の相対的増加の程度は, 日本稲より日印交雑種, インド稲半矮性種の方が大きい傾向を示した. そこで, 窒素施肥による葉面積増加を解析したところ, 日印交雑種, インド稲半矮性種の窒素施肥による個葉面積増加率は, 日本稲より明らかに大きかった. また, これらの品種群の比葉面積は日本稲より大きく, 比較的 "薄い" 葉を持つことが認められた. 以上のことから, 日印交雑種, インド稲半矮性種は, 日本稲と比較して, 窒素施肥による稈の形態的変化が小さく, 多窒素条件下での耐倒伏性が大きい一因と推察された. しかし, これらの品種群は, 窒素施肥による個葉面積の増加, 穎花数に対する葉面積の相対的増加の程度が大きく, 窒素施肥によって過繁茂になり易いことが推測された. 日印交雑種, インド稲半矮性種を遺伝資源として, 多収品種の育成を目指す場合, これらの点に関する改良が必要と考えられる.
  • 伊藤 浩司, 稲永 忍
    1988 年 57 巻 4 号 p. 699-707
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ネピアグラス (Pennisetum purpureum, 品種Merkeron) の生長の温度反応, および, 低温による生長抑制を受けた後の好適な温度条件下での生長の回復過程を, 主として, 葉の生長および乾物生産の面から検討した. 昼夜温が30/27℃, 23/20℃, 15/12℃, 自然光の人工気象室で15日間の温度処理を行ない, その後, 昼/夜温が32/26℃, 自然光のガラス室に移しで, 各温度処理個体を同一条件下で, 33日間にわたり育てた. 温度処理期間中は, 低温ほど, 葉期の進み, 葉面積の拡大および乾物生産が強く抑制され, 処理期間中の1個体当りの全植物体乾物増加量は, 高温区:36.6g, 中温区:24.6g, 低温区:9.1gの相違を生じた. ガラス室では, 前歴温度が低いほどRGRが高いことにより, 植物体全乾物増加量は温度前歴によらずほぼ同程度となり, 温度処理期間中の生長の抑制に対する補償的な生長がみられた。この補償的な生長は, 前歴温度が低いほど, 温度処理終了時における1茎当たりの未展開葉数が多く, 稈のTNC含有率が高いことによって, ガラス室における展開葉数の増加速度が大きく, それに伴って, 葉面積の拡大が促進されるとともに純同化率が高く維持されることによると推察された.
  • 梅崎 輝尚, 松尾 志保, 松本 重男, 島野 至
    1988 年 57 巻 4 号 p. 708-714
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズにおける矮性形質が, 直接収量に関わる開花や結莢習性にどのように反映されているかを明らかにするため, ヒュウガとヒュウガ矮性系統を供試し, 実験を行い, 以下の結果を得た. 1. 両系統とも, 開花は開花期間の初期に集中したが, 開花期間は開花始めの遅いヒュウガ倭性系統で短かった. 2. 両系統とも開花数と結莢数には主茎の占める割合より分枝の占める割合が大きかったが, ヒュウガ矮性系統では下位分枝に偏在する傾向がみられた. 3. 開花数はヒュウガ矮性系統がヒュウガの約50%に過ぎず, 両系統間の差は個体を構成する節数ではなく1節当りの開花数に起因した. 4. 1節当りの結莢数は両系統間に差は認められず, 1植物単位の支えうる莢数には限界があることが示唆された. 5. 単位茎重当り結莢数は単位茎重当り節数と同じような傾向を示すことから, ヒュウガ矮性系統の高い粒茎比は1植物単位を小さくすることにより達成されたものと考えられる. 以上のことから, 開花数は花芽分化期までの栄養生長量が制限要因となり, また, 結莢率には開花期以後の栄養生長量ならびに植物単位当りの結莢数が主要な要因になっていると考えられ, 前者は矮性形質の欠点, 後者は利点になっていることが推察された.
  • 浜地 勇次, 古庄 雅彦, 吉田 智彦, 伊藤 昌光
    1988 年 57 巻 4 号 p. 715-721
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ビール大麦の耐湿性交配母本を選定する目的で, ビール大麦を含めた多数の大麦品種を供試して, 湿害で影響を受ける形質および形質間の関連性について検討した. 耐湿性は各形質を主成分分析によって総合的に判定した. 結果は以下のとおりである. 1. ビール大麦を含めた二条大麦品種については, 穂数が湛水処理の影響を大きく受け, 減収の最も大きな要因となった. また, ビール大麦では子実重のみならず, 整粒重 (子実重×整粒歩合) が著しく低下した. 2. 湛水処理によって稈長, 穂数, 1穂粒数, 稔実歩合および千粒重のいずれの形質とも減少程度が大きい品種ほど, 減収の程度が大きい傾向にあったが, 穂数, 1穂粒数, 稔実歩合および千粒重の4形質は形質相互間の影響が大きかった. 3. そこで, 穂数, 1穂粒数, 稔実歩合および千粒重の収量構成要素と稈長の5形質の対照区比について主成分分析による解析を行った結果, 第1主成分は各形質の固有ベクトルが正の値となり, 湛水処理による形質相互間の影響を除いて, 各形質の被害程度を総合化した指標として利用できると考えられた. 4. ビール大麦品種は主成分分析による第1主成分と子実重の対照区比は小さく, 全般的に耐湿性が劣った. ビール大麦の耐湿性の向上を図るための交配母本として, 主に主成分分析による第1主成分と子実重の対照区比の結果から, 耐湿性の優れた数品種を選定した.
  • 大塚 隆, 坂 斉
    1988 年 57 巻 4 号 p. 722-727
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    インタクトな水稲幼苗の根部における酸性ホスファクーゼ活性を非破壊的に測定するための最適条件を検討した. その結果, (1) 基質p-ニトロフェニルリン酸の濃度および反応時間を変えた場合の根が示す酵素活性は基質濃度0.5-10mMの間で, 3時間までは直線的に増加した(第3図). (2) 幼苗数と根部の酵素活性の関係をみると生成したp-ニトロフェノールの総量は個体数に比例的に増加した. しかし, 乾物重当りの根の酵素活性をみると, 苗数が多くなるにつれて, 両者の平行関係は小さくなった(第4図). (3) 酵素反応のpH活性度曲線はpH 3-6で高い値を示し, pH 7以上になると急激に低下した. 温度は本実験で実施した20℃から30℃までの間ではその上昇に伴って増加した(第5, 6図). (4) インタクトな幼苗根の酵素活性に及ぼす葉齢の違いによる影響を調べたところ, 4葉期で最も高かった(第7図). (5) 4葉期と5葉期の水稲根の粗抽出液とインタクトな根が示す酸性ホスファターゼ活性を比較したところ(第1表), 両者間には平行関係があることが示唆された. また5葉期の活性は4葉期のそれの約50-60%に留まった. (6) 10-4Mイソプロチオランを処理した5葉期のインタクトな水稲根の酵素活性は, 無処理に比べて約40%増加した(第8図). 以上の結果は, 水稲の根の非破壊的な酸性ホスファターゼ活性の測定は比較的容易であるとともに, 水稲幼苗根の活力の指標に成りうる可能性が示唆された.
  • 谷山 鉄郎, 池田 勝彦, スバイヤ S.V., ラオ M.L.ナラシマ, シヤルマ S.K.
    1988 年 57 巻 4 号 p. 728-732
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    収量調査には Vijayamahsuri, Sonamahsuri, Mahsuri, Basmati, HR 59の5品種を用いた. Mahsuri は東南アジアで比較的広く栽培されていると共に, Vijayamahsuri や Sonamahsuri の交配母本でありすぐれた品種でもある. 一株当り穂数は Vijayamahsuri と Basmati の浅植えで多く, 他の品種は少なく7本程度であった. 一穂当り籾数は Mahsuri が多く, ついで Vijayamahsuri であった. 香り米の Basmati は最も少なかった. 千粒重は一般的に日本型水稲に比較して著しく低かった. 収量は Vijayamahsuri がすぐれ, ついで Sonamahsuri であった. HR 59 と Basmati は低かった. 浅植えした Basmati は穂数と登熟歩合の増大で深植え(慣行植え)に比較して増収した. Mahsuri は肥沃土または多肥栽培では倒伏しやすく, 本調査水田地域においても, 大部分が登熟後期に倒伏した. 倒伏は大別して3種類の型があり, 上位第1または第2節間の挫折が最も多かった. 倒伏の主因はこれら上位の節間が日本型水稲に比較して長いことによるものといえよう. Vijayamahsuri と Sonamahsuri は日本型水稲に類似した節間伸長を示した. インドの稲作は施肥量の増大につれて増収していることから, 今後, 肥培および水管理技術の向上につれて増収していくものと思われる.
  • 前田 英三, 前田 和子
    1988 年 57 巻 4 号 p. 733-742
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの葉の先端の排水組織を, 光学顕微鏡と透過型電子顕微鏡で研究した. 大型の導管節の末端が, 表皮細胞と接している場合がある. 導管節の細胞壁に, 大きな細胞間隙が隣接している. この細胞壁には, ところどころに2次壁肥厚が見られる. 細胞間隙にバクテリアの生育している場合がある. 導管節を取り囲んでいる葉肉細胞には, 細胞壁内向突起がある. 葉肉細胞の細胞壁と原形質膜との間に, しばしば電子密度の高い大きな沈着物が見られる. また葉肉細胞には, ミクロボデイーが多く存在する. 以上の結果から, イネ葉の排水組織が, 大型導管節・細胞間隙および水孔から構成されることを示した.
  • 国分 牧衛, 持田 秀之, 朝日 幸光
    1988 年 57 巻 4 号 p. 743-748
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    大豆収量の品種間差異を葉の光合成能の面から解析するため, 熟期, 収量性の異なる17品種・系統を供試し, 活動中心葉のみかけの光合成速度を栄養生長期, 英伸長期および子実肥大期に圃場条件で測定した. 光合成速度は, 早生群では栄養生長期と莢伸長期において, 中生群ではいずれの時期においても, 晩生群では子実肥大期において, それぞれ有意な品種間差異を示した. 光合成速度は, 栄養生長期<莢伸長期<子実肥大期の傾向が認められ, それに伴って品種間の順位が変動する場合が多くみられた. 栄養生長期においては, 光合成速度は品種・系統間において, 葉の大きさとは負の, SLWおよびクロロフィル含有率とは正の相関を示す傾向があった. しかし, この傾向は一部の品種群を除いて, 莢伸長期以降においては認められなかった. 莢数決定期における光合成速度は, いずれの品種群においても, この期間における CGR, NAR と正の相関を示さなかった. 子実収量は早・中生品種群ではどの時期の光合成速度とも有意な相関を示さなかったが, 晩生品種群では子実肥大期の光合成速度と密接な正の相関を示した. これは高い光合成能が多収をもたらしたのではなく, 多収品種の大きな sink 能によってその光合成能が昂進されたものと推定した.
  • 菅 徹也, 根本 圭介, 阿部 淳, 森田 茂紀
    1988 年 57 巻 4 号 p. 749-754
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    シミュレー卜した根長密度を用いて根系形態を解析するモデルを提案する. ひげ根型の根系をもつ作物個体群を想定し, (1) 1人根均等伸長, (2) 分枝均一および (3) 半球状根域という3つの単純な仮定をおく. その仮定より, 根長密度 (p) は, 土壌中の位置の関数として数学的に記述することができる. p のシミュレーションは, コンピュータープログラムで行なうが, そのシミュレーションプログラムは, 株間距離 (a), 条間距離 (b), 株の大きさ("株半径" ; ro), 根域の大きさ ("根域半径" ; rmax) および根の分枝の程度 ("根長密度定数" ; k) という5つのパラメーターを含む. k および rmax の値は, シミュレートした根長密度 (pmodel) が実測した根長密度(pactual) と最もよく適合するように選定する. シミュレーションプログラムのパラメーターから, いくつかの根系形態の指標が導かれる. それらの指標は, 重要でありながら通常圃場での測定が難しい, 種々の形質に対応するものである. 第2報では, 小稲根系を対象とした, 本モデルを利用した解析例を報告する.
  • 森田 茂紀, 菅 徹也, 根本 圭介
    1988 年 57 巻 4 号 p. 755-758
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    著者等が提案した根長密度モデルを用い, 対照区と遮光区(幼穂形成期から出穂期に遮光処理)で生育させた水稲根系を解析し, モデルの有効性を検討した. 根長密度モデルにおける条間距離, 株間距離, "株半径" に, それぞれ対応する実測値を採用し, シミュレーションを行なった. その際, 根長密度の実測値とモデル値とが最もよく一致するように, "根長密度定数"・"根域半径" を選定した. その結果, "根長密度定数"・"根域半径" の値は, いずれも対照区に比較して遮光区で小さかった. また, 上記の "根長密度定数"・"根域半径" と, 条間距離, 株間距離, 株の半径, 1株当りの伸長1次根数の実測値から, 根系形態に係わる種々の指標を算出した. 算出した, "モデル1次根長", "分枝係数", "株1次根長", "株全根長", "面積1次根長", "面積全根長" のいずれの値も, 対照区に比較して遮光区で小さかった. 以上の結果は, 対照区に比較して遮光区で根系の発達が不良であることを示すものと考えられる. また, 対照区および遮光区のいずれの場合も, 根長密度の実測値とモデル値との適合度は悪くはなかった. ここで両者の値に「ズレ」が認められたのは, 現実の根系を3つの単純な仮定([1次根均等伸長], [分枝均一], [半球状根域])によって近似しているためである. しかし, モデルを利用して選定したパラメーターや種々の根系形態の指標について対照区と遮光区の間に認められた差は, 従来の推察を裏づけるものであった. これらのことはモデルの有効性を示すものと考えられる.
  • 岩間 和人
    1988 年 57 巻 4 号 p. 759-764
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    施肥量がバレイショの根の生長におよぼす影響についての研究はきわめて少なく, またその結果が一致していない. そこで, 施肥量の異なる (窒素, リン酸, 加里のそれぞれについて 0, 75, 150 および 300 kg/ha) 圃場条件下で, 根乾物重(根重), 根長, 分枝根長/根長比(分枝根長比), 根長/根重比 および根長当り根呼吸速度を, 萌芽後28日目と56日目に調査した. 根の採取は鉄製のモノリス枠 (幅5 cm, 長さ30 cm, 深さ30 cm) を用いて行ない, 根呼吸速度は前報3)と同様の手法で調査した. 分枝根長比および根長/根重比に対する処理の影響は概して小さかった(第3表, 第2図). このため, 根重と根長の処理に対する反応はほぼ類似し, 施肥量が少ないと根重および根長の増加が抑制され, また根の枯死が早まった(第2表, 第4表). さらに, 根長当り根呼吸速度にも処理間で有意な差異が認められた. 両調査時期とも多肥区ほど高い値を示したが, 特に56日目でその差異が顕著であった(第5表). 以上のことから, 施肥量の増加にともない根の養分吸収能力が増加すること, これは開花始め以前では主として根量の差異に, またこれ以降では主として単位根量当りの根活力の差異に起因することが示唆された(第3図).
  • イシレップ スマルディ, ナカムラ チエミ, 谷口 武, 前田 英三
    1988 年 57 巻 4 号 p. 765-772
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    サトウキビカルスは, 主に葉片の切断面及び背軸側表層から生じる. カルスは塊状となり, ときに白色となる. カルスが生長すると, カルス表面に裂け目が生じ, この裂け目の内部から新しい細胞が形成される. この細胞は卵型となるか, または長く伸長し, 柔らかいカルスを形成する. このカルス内に, 分裂細胞からなる球状構造が生じる.
  • 宮川 修一, 黒田 俊郎
    1988 年 57 巻 4 号 p. 773-781
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    東北タイの天水田稲作の実態を知るため, コンケン市近傍の農村ドンデーン村で1981年と1983年に農家水田の収量調査を行った. その結果同一村内でも水田の筆間の収量の変異がきわめて大きいことがわかった. 1981年は雨期の後半に雨量が不足気味であったため, 保水性の劣っている地形的に高位の水田では低位の水田に比較して63%の収量しか得られなかった. 種々の要因を数量化したところ, 各水田の水条件, 土壌肥沃度および栽培品種の3要因により, 収量の変異の45%が説明可能であった. 特に水条件と収量との偏相関係数は0.465で要因間では最大を示した. 1983年は降雨量が多く平均収量は1981年より増加し, 水田間の変異は縮小した. 上記3要因のほか, 各水田の前年の作柄ならびに当年の施肥の有無を数量化して収量の変異の貢献度を調べたが, 5要因でも17%が説明できたに過ぎなかった. 一方, ワラ重についてはこの5要因によって47%が説明可能であり, 要因のうちでは土壌肥沃度の関与の程度が最大であった. 以上のことから, 降雨量の変動が大きいこの地域では, 灌漑施設の整備が望まれるとともに, 収穫指数の高い品種または栽培方法の導入が必要であると考えられた.
  • 中世古 公男
    1988 年 57 巻 4 号 p. 782-789
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    植物は一般に機械的刺激によって矮性化することが知られている. そこで本研究では, ダイズの草型と受光体制ならびに生育・収量との相互関係を解明する一環として, 30cmの正方形植えに栽植した有限型品種キタホマレについて, 第5本葉展開期 (7月10日) から幼莢期 (栄養生長完了期, 8月6日) まで4週間, 群落上層に機械的刺激を与え, 形態的変化を明らかにするとともに, その群落構造, 乾物生産および子実収量に及ぼす影響を調査した. 機械的刺激によって主茎の生長が抑制されたが, 分枝の生長は促進され, 処理後の各器官における主茎-分枝比 (乾物べース) は, 無処理区1対1に対して処理区では1対2~3となった. 刺激を受けた植物体は, 形態的には, 茎が太く, 短縮し, 短い葉柄をもつ小型の厚い葉を着生し, 分枝数の多い典型的な矮性型の草型を示した. また, 葉は小型化したが, 総節数が増加したため, 葉面積指数は無処理区と大差なく推移した. 処理後の葉群構造は, 典型的な天井型構造を示したが, 吸光係数は無処理区に比べ小さかった. 莢の発育は, 開花期間中は機械的刺激により遅れる傾向が認められた. しかし, 処理終了後の登熟期間中では, 処理区は純同化率および莢実乾物増加速度が大きく, 分枝の着莢数が増加して成熟期の子実収量は無処理区に比べ38%大きかった. このような矮性型の草型は, 相互遮蔽が大きく, 倒伏の危険性がある密植条件下では有利なものと推察された.
  • 礒田 昭弘, 中世古 公男, 後藤 寛治
    1988 年 57 巻 4 号 p. 790-791
    発行日: 1988/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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