日本作物学会紀事
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ビール大麦の耐湿性交配母本の選定
浜地 勇次古庄 雅彦吉田 智彦伊藤 昌光
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1988 年 57 巻 4 号 p. 715-721

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抄録
ビール大麦の耐湿性交配母本を選定する目的で, ビール大麦を含めた多数の大麦品種を供試して, 湿害で影響を受ける形質および形質間の関連性について検討した. 耐湿性は各形質を主成分分析によって総合的に判定した. 結果は以下のとおりである. 1. ビール大麦を含めた二条大麦品種については, 穂数が湛水処理の影響を大きく受け, 減収の最も大きな要因となった. また, ビール大麦では子実重のみならず, 整粒重 (子実重×整粒歩合) が著しく低下した. 2. 湛水処理によって稈長, 穂数, 1穂粒数, 稔実歩合および千粒重のいずれの形質とも減少程度が大きい品種ほど, 減収の程度が大きい傾向にあったが, 穂数, 1穂粒数, 稔実歩合および千粒重の4形質は形質相互間の影響が大きかった. 3. そこで, 穂数, 1穂粒数, 稔実歩合および千粒重の収量構成要素と稈長の5形質の対照区比について主成分分析による解析を行った結果, 第1主成分は各形質の固有ベクトルが正の値となり, 湛水処理による形質相互間の影響を除いて, 各形質の被害程度を総合化した指標として利用できると考えられた. 4. ビール大麦品種は主成分分析による第1主成分と子実重の対照区比は小さく, 全般的に耐湿性が劣った. ビール大麦の耐湿性の向上を図るための交配母本として, 主に主成分分析による第1主成分と子実重の対照区比の結果から, 耐湿性の優れた数品種を選定した.
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