日本作物学会紀事
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イネの小胞子初期冷温処理による雄性不稔 : 第29報 前歴水温上昇による耐冷性向上の機構
佐竹 徹夫
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キーワード: イネ, 花粉, 小胞子, 水温, 不稔, 冷温, 冷害
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1989 年 58 巻 2 号 p. 240-245

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抄録
ポットで土耕栽培のイネをファイトトロン自然光室(昼24/夜19℃)内で前歴水温(頴花分化期から小胞子初期までの水温)を変えて栽培し, 小胞子初期に冷温処理(12℃3日間)を行って耐冷性を検定した. 前歴水温の上昇(18℃から25℃の範囲で)に伴う耐冷性の向上は開花期の葯当り充実花粉数の増加と高い相関関係を示し, 充実花粉数の増加は柱頭上受粉数の増加を介して受精率の向上をひき起こした. 前歴水温の上昇による充実花粉数の増加は小胞子分化数の増加によるものであり, 分化後花粉成熟までの過程で退化および発育不全となる小胞子数は前歴水温にほとんど影響されなかった. 他方, 小胞子初期の水温上昇は発育不全小胞子数を減少させることによって充実花粉数を増加させた. 以上の結果に基づいて, 先に提唱した前歴深水灌漑および古くから唱導されてきた危険期深水灌漑から受精率向上に至るまでの因果関係を明らかにした
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