抄録
水稲の登熟期に14CO2を使って米粒の生長, 同化産物の各成分への分配について実験を行った. コシヒカリを供試し, 出穂前から完熟期まで6回にわたって14CO2を作物体に取り込ませた. 標識した玄米は液体窒素で凍結割断した後, X線フィルムに密着させて露光したオートラジオグラフィによると, 標識された産物は出穂前5日には全粒に分布したが, 出穂後5日には全粒または中心部に, 出穂後11日には中心部, 18, 25日には外部に多く分布した. 玄米における各期の総放射活性は出穂後18日までは増加し, その後では低下した. 玄米を低分子物質, 水溶性多糖, デンブン, 脂質, タンパク質と細胞壁に分画して放射活性を測定したところ, 標識された同化産物はデンプンヘ最も多く分配された(78.7%)が, そのほか登熟前期には細胞壁に多く, 後期には低分子物質に多く分配されることが分かった. 各成分における放射活性のピーク時期は, 脂肪, タンパク質と細胞壁が出穂後11日, 水溶性多糖とデンプンが出穂後18日, 水溶性低分子物質が出穂後25日であった.