抄録
圃場条件下において, 水稲個葉の光合成速度 (CER) は, 葉面光強度が光合成の光飽和点を越えている場合にも, 時刻のすすみに伴い低下する。この現象をCERの時刻による変動と名付け, その特徴と生理的基礎につき検討した。(1) さまざまな年度, 生育時期, 天候, 葉位において, 9-10時および15-16時の2つの時間帯のCERを比較した。46例の平均で, 前者に対する後者の低下率は19%であった。(2) 時刻のすすみに伴うCERの低下は, 気孔伝導度 (gs) の低下と関連していることが認められた。(3) 日中におけるgsの低下は, 葉群上で測定された蒸発計蒸発速度が大きい日ほど大であった。(4) 日中におけるCERの低下は上位葉よりも下位葉において大であった。この傾向は, 日中におけるgsの低下が上位葉よりも下位葉で大きいことにもとづくものと考えられた。