抄録
トウモロコシ孤立個体の根系領域の発達過程を経時的に観察した。個体の周辺から採取した土壌に含まれる根の長さをパーソナルコンピュータによる画像解析によって測定した。根長密度の高い領域 (>5000 m/m3) は, 生育の初期には株基部から水平方向に急速に拡大し長方形状の外形を呈していたが, 播種後10週目以降には株直下方向へ拡大した。深さ約0.3 m, 株からの水平距離約0.3 mの地点の土壌領域では, 根長密度の増加が遅く, 生育の終期においても根長密度は比較的低いままであった。平均根直径の値を求めたところ, 株直下の根系領域は比較的太い根で構成されているのに対し, 地表に近い領域では細い根が優勢であることが明らかになった。個体の総根長は生育の全期を通じて直線的に増加し最終的に157 kmに達すると見積られたが, 深さ0.1 mまでの土壌層には出穂後根長の若干の減少が認められた。