日本作物学会紀事
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粟の自然雜交に就いて
高橋 昇星野 徹
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1934 年 6 巻 1 号 p. 3-19

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抄録
一、連年同一圃地に栽培を行ひ來りたる三千九百二十五種の粟品種中より、任意緑色品種の穗を採取し、次代植物の観察を行ひ、此れ等緑色品種の幼苗中に混生したる着色個體を檢出したるに、一九二九年及び一九三〇年兩度の観察總苗数二百寓五千五百二十一本に對して着色個體即ち自然雜種と見做し得るもの一萬九百八十四本、即ち、自然雜交率0.59%を得たり。二、粟の自然雜交率は品種によって著しき相異あるものの如く七月中下旬に出穗せる品種は概して雜交率高く、出穗期早き品種又は晩き品種は低率を示せり。三、刺毛(Bristle)着生の疎密と自然雜交率の間には多少の關係あるものの如く、着生密なるものは概して雜交率低く、疎なるものは高率を示せり。四、出穗期略相等しき兩品種を、條間を異にして栽培し、自然雜交率を観察したるに、第一區(二尺畦交互)1.65%第二區(三尺畦交互)1.59%, 第三區(四尺畦二列交互)1.67%を得たり。而して第四區(混播區)は雜交率最も高く2.36%を示したり。五、風向と自然雜交率との間には可成顯著なる關係存在するものの如く、第三區(四尺畦二列交互)に就いて見るに風下列1.95%風上列1.35%の自然雜交率を示したり。六、本實驗に於て、自然雜種として檢出したる着色個體の一部に就いて次代観察を行ひたる結果、孰れも次代に於ては着色個體と緑色個體とに分離し、其の比數三對一を示すものと、九對七を示すものとあるを認めたり。
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