抄録
水稲品種コシヒカリでは幼穂発育初期に水ストレスを与えると出穂が積算水ストレス(水ストレスの強さと期間の総合評価値)に比例して遅れる. 水ストレスによるイネの減収は出穂遅延を伴うことから,個体当たりの穂重もまた積算水ストレスが大きくなるほど低下すると考えられた. そこで, このことを実験的に検討するために生育期間の異なる3品種(こしにしき, コシヒカリ,農林18号)をポットに移植し,主程の幼穂が穎花分化期に達するときに2から12日間の水ストレスを与える6区,及び対照として常時湛水条件とする区を設けた. このような処理によって夜明け前の葉身水ポテンシャルが低下すると同時に,出穂が遅れ,個体当りの穂重も低下した.出穂の遅れと個体当り穂重の低下は,いずれも積算水ストレスに比例した.積算水ストレスに伴う個体当り穂重の低下程度は, コシヒカリが最も大きく,以下,農林18号,こしにしきの順であった. これは個体当り籾数のそれと同様で,幼穂発育初期の水ストレスは,主として籾数の低下を介して個体当り穂重を低下させることがわかった.