抄録
植物でのアセチルコリン(ACh)の生理作用を解明するため,熱ストレス後の葉の萎凋から回復までの現象とACh含量の変化を熱帯地域(熱帯常緑降雨林地域)から導入したササゲ,キュウリおよびダイコンの品種を供試し温帯地域に適応している日本品種と比較した.熱ストレスは,ぺーパーポット内の植物をヘヤードライヤーの温風下(30℃)に2分または3分間さらした. ACh含量は熱分解装置と連結したガスクロマトグラフィーにより定量した.熱帯地域適応品種は,葉の萎凋程度が低く,萎凋からの回復も著しく速かった. また,熱ストレス前のACh含量も温帯適応品種に比べ葉,茎,節,根で2-10倍高かった. さらに,熱帯地域適応品種は熱ストレス後,葉,茎,葉枕,節,葉身,葉柄および根でACh含量が顕著に変化した. 一方,温帯地域適応品種では,熱ストレス後の萎凋に伴うAChの含量変化が小さいか, または,殆ど認められなかった. これらの結果から,熱帯地域適応品種の熱ストレス下における葉の萎凋および回復を伴う葉の敏速な反応はAChの迅速な量的変化に起因し,また, AChの含量変化には,葉枕,節,根でのACh 分解酵素の関与が示唆された.