抄録
水稲における気孔開度, 光合成速度の日中低下の程度は, 同一茎に着生する葉身でも下位の葉が上位の葉に比較して大きい. 本報告では, 日中の気孔の閉鎖程度と密接に関係する水の通導抵抗を葉位別に測定し, さらに葉位によって水の通導抵抗の異なる要因を検討した. 根から葉身までの水の通導抵抗(全抵抗)は上位の若い葉で小さく, 下位の古い葉で大きかった. 展開完了後の日数の等しい葉身では葉位が異なっても全抵抗には相違がなく, 展開完了後の日数の経過に伴ってすべての葉位で全抵抗が大きくなった. このことから, 下位の葉で全抵抗が大きいのは, 下位の葉ほど展開完了後の日数が経過しているためであることがわかった. 下位の葉は古い根と, 上位の葉は新しい根と密接な関係があること, 切断茎を用いて求めた茎基部から葉身までの水の通導抵抗は展開完了後の日数が経過しても大きく変化しないことから, 葉身展開完了後の日数の経過に伴って全抵抗が増加するのは, それぞれの葉身と関係している根が老化し, 根の水の通導抵抗が増加する, いいかえると吸水能力が低下するためであると推察された. このことから, 気孔の日中の閉鎖程度が下位の葉ほど大きいのは, 下位の葉と関係している根ほど水の通導抵抗が大きいことによると考えられた. さらに, 葉が若い時には全抵抗に対する茎葉部の抵抗の割合が大きいが, 葉のageが進むとともに全抵抗に占める根の抵抗の割合が大きくなることがわかった.